column 2023.8.10
 
ニューニュータウン西尾久プロジェクト

イベントレポート「荒川でローカルな働き方を見つけよう!」

千葉敬介(東京R不動産)
 

荒川区のプロジェクトとして空き家活⽤の活動をしている東京R不動産。事業を行う場としての下町のポテンシャルを掘り下げようと、亀戸を拠点に活動するファッションデザイナー飛田正浩さんをゲストに迎えたトークイベントを開催しました。

ファッションデザイナーの飛田正浩さん(左)を迎えて、トークイベントを行った

ローカルを拠点にものづくりをする

この数年間の活動のなかで広がってきた、荒川区で事業をしている人、新しく入ってきた人、場所を探している人たちとのつながり。

そんな彼らの多くが、下町・荒川に拠点を構えた理由にあげるのは、物件の自由度の高さです。荒川区には、元工場や商店街の店舗など、事業の拠点として可能性を感じられる建物がたくさんあります。

レディースブランド「spoken words project」、パジャマと下着をメインにしたブランド「PAMM」などを手掛けるデザイナーの飛田さんが拠点としているのは、荒川と同じく下町風情の残る、江東区亀戸。

陶芸、金属、絵画など総勢6チームのアーティストと大きな建物をシェアして制作活動を行っています。そんな飛田さんが、東京のローカルに拠点を持つことなった経緯についてお話を聞きました。

飛田さんが手掛ける、パジャマと下着をメインにしたブランド「PAMM」

「アパレルブランドなら拠点は原宿だよなと思ってアトリエを構えました。でもどうしても染色やプリントをしたくなっちゃう。そうやって、おしゃれにリノベーションした原宿のアパートがどんどん汚れていくんです。立地的には、編集者、カメラマン、スタイリストが立ち寄ってくれるおもしろさとかはあったんだけど、絵の具をバケツで溶くのは原宿でなくてもいいんじゃないかと思いはじめて。それで墨田区の錦糸町に移動したんです。

そこはインスタレーションや彫刻とか、自分でアート作品をつくっている作家たちのシェアアトリエ。バケツ工場だった建物なので、音や匂いが出ても怒られない。結局、そのアトリエに約10年、2011年までいました。その後は、もっと安くていいところがあるんじゃないかということで、シェアしていたアーティストたちみんなで、いまの亀戸のアトリエに引っ越しました。

最近はアパレルをはじめ、ものづくりをする若い世代が、下町とか田舎のほうへシフトしていっているのはあるかもしれないですね。例えばミシンを踏んでいるだけでも、人ってのぞいてくるんですよ。そういった意味でも、アトリエ兼ショップとか、まちに開いている拠点が下町に増えているのかなと思います」

飛田さんのアトリエ。基本的には作業場だが、1階では展示をすることもあるそう

空き家アイデアワークショップ

続いて参加者とのワークショップ。飛田さんのトークを受け、下町の空き家を活用した事業の可能性について考えました。そこで出たアイデアをご紹介します。

ワークショップの様子

「革職人をやっているのですが、店舗だった物件を活用すると、制作過程を道行く人に見せられると思いました。日に日に製品が育っていって、完成するのを待ちわびてもらえるようになったらなと。修理もやっているので、地域の人と話しながら、困りごとを解決できるようなスペースにもできるといいなと思います」

「店舗+住居の空き家は、新しいことにチャレンジするスペースとして、店を出してみたい夫婦に良さそうだと思いました」

「花屋やペットグッズ屋など、一つの空き店舗に2、3のショップが入ることで、いろんな人が興味を持つスペースになる可能性がありそう」

イベントの前に空き家物件の見学会も行った

他にもさまざまなアイデアが飛び交ったワークショップ。それを受けて飛田さんにもコメントをいただきました。

「修理屋というのもありましたが、リペアすると一生使えるし、そこからコミュニティもできて、まちをいいムードにしていけるのかなって思いました。そうやって、『いい生活ってなんだろう』っていうことが、まちぐるみで共有できるといいですよね。

あとさっき荒川のまちをパトロールしてたら、ちびっこが大騒ぎしてたんですけど、彼らが大人になったときのまちが素敵に想像できるよう、いま頑張らないといけないんだろうなって思いますね」

R不動産では2021年から荒川区の事業でエリアリノベーションを手掛けています。その会議でも、地域で目指す将来像を議論していた際に、地域の建築家から、ルイス・カーンという有名建築家の言葉を引用して「まちを歩いている少年が、将来なりたいものに出会えるのが、良いまち」で、そういう地域を目指したい、という意見があったばかり。

地域の目指す姿が飛田さんの言葉とシンクロした一日でした。

(写真:加藤雄太

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