column 2020.6.1
 

京島の立役者、後藤さん

西村愛子、森田千優(東京R不動産)
 

古い長屋が多く残る墨田区京島の街で、小商いをする若い人たち。彼らにこの街を選んだ理由を尋ねると、「ある人に誘われたから」と口を揃えて答えます。いったいどんな人なのか? いよいよ遭遇! 彼の目から見た京島の魅力とは……。

後藤さんが最初に手がけた「爬虫類館分館」

街で聞き込みをしていると、色んな人を連れてくる“街のお兄さん”がいるらしく、みんなから慕われている模様。名前は後藤さん。色んな活動をしていて多忙なようで、簡単には会えなそうです。

今日は会社に戻ろうか、と思っていると、古民家に大きく携帯番号の書かれた紙が張ってあるではないですか!

後藤大輝……。もしかして、この人が後藤さん!?

勢いで連絡してみると、快く会ってもらえることに。詳しく話を伺いました。

京島の案内人としてさまざまな活動をしている後藤さん

後藤さんは長屋など魅力的な物件を探しては、面白いクリエイターの知人を京島に連れてくる「街の案内人」です。物件と一緒に街も案内することで、京島の街と人の魅力を伝えています。

実際に一緒に街を歩き、街や人、建物の話を聞くと、後藤さんというフィルターを通すことで、この街がより魅力的に感じられます。

見つけた物件は、貸しに出していないものがほとんどだったようですが、地域の方や不動産業者の協力もあって、貸してもらえるようになったのだとか。現在は京島周辺で10拠点を運営していて、そのうち9カ所を賃貸で借りているそうです。

後藤さんが京島に移住したのは、2008年。当時は映画制作をしていて、作品の舞台にする面白い街を探していたところ、京島に出会いました。スカイツリー建設を前に開発されていく地域。一方で戦前の長屋が多く残っているという情報があり、新旧入り混じる街が面白そうだと思ったのだとか。

京島に来た2008年当時の写真。現「爬虫類館分館」を仲間と改装中(写真提供:後藤大輝)

クリエイターからみた京島の魅力

「街並みは、住む人の手が加わることで表現されるものの積み重ね。その中で生活すること自体が、表現活動だと思っている。京島は決まりすぎていないから、表現できる余地がある。まだまだ、たくさんの引き出しが、この街にはあると思う。自分たちの暮らしを自らで考えてつくれるような、環境と手応えがある街であり続けたい」と後藤さんはいいます。

京島の魅力の一つは、人が自立していること。戦後の苦楽を共にしたことや、町工場が多いこともあり、自分たちの力で街を変えていくマインドが備わっています。街全体が変わるような大きな開発がなく、小さな単位で街が変化していき、たくさんの表現活動がされてきました。

クリエイターや複業をしながら楽しく暮らしたい人にとって、そんな背景や自分の意思を表現できる余白は、魅力的にみえるそうです。求めるライフスタイルと街の相性が良く、自然と人が集まることで街が面白くなっています。

後藤さんが運営する物件の数々。こちらはシェアハウス三軒長屋「旧邸」

後藤さんの活動について

後藤さんは街の案内人の他に、日替わり店長が20人もいるシェアカフェ「爬虫類館分館」やシェアハウスの建物の運営、アートイベントの企画、大正時代からある長屋での宿泊施設の運営、レンタルスペースの運営、空き家コーディネーター、新築プロジェクトの企画など、さまざまな活動をしています。

自分が住みたい街はどんな方法でできるのか、どう街を面白がれるのか。後藤さんは街を自分ごとに考える軸を持っています。

後藤さんが運営するレンタルスペース「稽古場」

移住当初、後藤さんが京島で撮ろうとしていたのは「現実になる映画」。この街に来て生き方が変わる人を描く予定でした。作品も街も面白くするために、100人ほどこの街に連れてこようと思い、知人に声をかけたのだとか。

ところが呼んだ人が実際に街に根付いていくことで、次第に街が面白くなり、結果として後藤さんは映画制作よりも現実の暮らしにのめり込み、さまざまなプロジェクトを仕事として受け持つようになっています。

この街を好きでいたいと自発的に始めた結果が、今の街の面白さにつながっている。好きが武器になっていると感じました。

後藤さんが運営する宿泊施設「別館」

気になる京島、今後の展望

「京島には色んなジャンルのイベントがあり、新しく街に来た人と既存のコミュニティが交わるきっかけがある。“新しい家族像”のような、人との結びつきを提案できる街になると思っています。」

京島に行く度に、どんな面白い人に出会えるのか、街の人は何を考えているのか、どんな風に変化していくのか……、と楽しみになります。後藤さんに話を聞いて、この街が面白いのは、常にアップデートされていて、住人自ら暮らしをつくり上げているからだと気付きました。

後藤さんは京島をはじめとして周辺にも拠点を設け、活動を展開しています。この秋開催予定の「すみだ向島EXPO 2020」では、墨田区の木造住宅密集地域である旧向島区(東向島、八広、文花、押上など)を対象に、街と建物の使い方を、アーティストや、実際に使用する人、街の人たちと一緒に考えていく仕組みづくりを進めています。さらに面白くなっていきそうな予感……。これからの京島や後藤さんから目が離せません!

すみだ向島EXPO 2020

これから後藤さんが運営する予定の物件。ますます面白くなりそう!

ツアー企画中!

そんな後藤さんに京島を案内してもらうツアーを6月中旬にやろうと企画中。こんな時期なので、オンラインにて開催予定です。

後藤さんに話を聞いてみたい、京島を見てみたい、魅力を感じたい、エリア問わず小さくお店始めたい、と考えている方にぜひ来ていただきたい。詳細は後日お知らせします!

(2020年6月5日追記)
ツアーの詳細が決定。詳しくはこちらから。
6/13 後藤さんとゆく京島ツアー@オンライン 開催!!

※ 京島エリアの物件も募集中
京島エリアの物件

関連コラム
おすすめコラム
 
カテゴリホーム
コラムカテゴリー
 
特徴 フリーワード
フリーワード検索
関連サービス
 
メールサービス
 
SNS
 
東京R不動産の本
 
公共R不動産のプロジェクトスタディ

公共R不動産の
プロジェクトスタディ

公民連携のしくみとデザイン




公共R不動産のプロジェクトスタディ

CREATIVE LOCAL
エリアリノベーション海外編

衰退の先のクリエイティブな風景




団地のはなし 〜彼女と団地の8つの物語〜

団地のはなし
〜彼女と団地の8つの物語〜

今を時めく女性たちが描く




エリアリノベーション 変化の構造とローカライズ

エリアリノベーション:
変化の構造とローカライズ

新たなエリア形成手法を探る




PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた

PUBLIC DESIGN
新しい公共空間のつくりかた

資本主義の新しい姿を見つける




[団地を楽しむ教科書] 暮らしと。

[団地を楽しむ教科書]
暮らしと。

求めていた風景がここにあった




全国のR不動産

全国のR不動産:面白く
ローカルに住むためのガイド

住み方も働き方ももっと自由に




RePUBLIC 公共空間のリノベーション

RePUBLIC
公共空間のリノベーション

退屈な空間をわくわくする場所に






toolbox 家を編集するために

家づくりのアイデアカタログ






団地に住もう! 東京R不動産

団地の今と未来を楽しむヒント






だから、僕らはこの働き方を選
んだ 東京R不動産のフリーエー
ジェント・スタイル






都市をリノベーション

再生の鍵となる3つの手法






東京R不動産(文庫版)

物件と人が生み出すストーリー






東京R不動産2
(realtokyoestate)

7年分のエピソードを凝縮






「新しい郊外」の家
(RELAX REAL ESTATE LIBRARY)

房総の海辺で二拠点居住実験






東京R不動産

物件と人が生み出すストーリー






POST‐OFFICE―
ワークスペース改造計画

働き方の既成概念を変える本