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column 2019.2.19
 
「甘夏民家」が提示する、風景の残し方【後編】
室田啓介(東京R不動産)
 

「旅する大家」横山 亨さんが「甘夏民家」をつくるまでの経緯について伺った前編に続き、後編では、「サラリーマン大家」ブームに見られる最近の不動産賃貸業への疑問と、大家業のあるべき姿へのアップデートについてお聞きしました。

カフェ「雨ニモマケズ」で横山 亨さん(右)にお話しを伺いました

不動産会社退職のキッカケとなった、大家業への失望

室田:大手不動産会社勤務から今に至る流れは、どのような感じだったんですか?

横山:約8年間の勤務で、たくさんの土地や建物の売買に関わりました。
ただ自分の中で不動産に対する考え方や価値観が変わっていったのをきっかけに、色んな方の不動産コンサルティングに関する本を読みまくり、不動産関係の講習会などにも参加したことで、自分の進むべき方向性が見えたような感覚があって。ちょうどその時期に、著名な不動産コンサルタントの方が久々にスタッフを募集していると聞いて、すぐに応募して、ご縁あってその方の不動産コンサルティング会社に転職しました。
それからはその方のもとで、さらにたくさんの不動産コンサルティングに関わりました。

室田:ではその延長線上に今の横山さんがある、という感じでしょうか?

横山:それがまたそうではなくて。ちょうど当時は、「サラリーマン大家」という言葉が出始めたタイミングで、割安で買える旗竿状の土地を買って長屋を建てたり、フルローンを組むための違法な二重売買契約とか、善悪さまざまなお金儲けのテクニックが共有され始めたタイミングでした。
そんな中で仕事を続けていくうち、すごく失礼だと思いますが自分の正直な気持ちなのであえてそのまま言うと、不動産コンサルティングで関わった多数の大家さんや、大家業を目指している人を見ていると、数字しか見ていないというか、自分だけ儲かればそれでいいというような、欲の張った方がすごく多くて。そういう人たちと接することに、心底嫌気がさしてしまったんです。
せっかく自分なりの不動産への正しい向き合い方ができて、それを多くの方に広めるチャンスも手にしたんですけど、なかなかお金最優先の考えを変えさせるには至らなくて。最終的には、自分の知識をそんな人たちに教えるのが嫌になってしまって。入居者をただの金づるとしか考えられない人たちのためには絶対に働かないと決めて、不動産コンサルティング会社を退職しました。その後、職業技術訓練校に通って建築の施工技術を習得し、今に至ります。

室田:僕の感じていることもまったく同じなので、すごく共感できます。だからこそ僕たち東京R不動産では、すでにお金が最優先になってしまった大家さんをなんとかするよりも、「ホビーとして不動産を楽しもう!」というメッセージに共感してくれる新しいマインドの大家さんを増やすことで、大家業をアップデートし、愛のある不動産を増やしていきたいと考えているんです。

異国感のある内装が魅力的

「旅する大家」横山さんと考える、不動産賃貸業のアップデート

室田:ちなみに横山さんは、物件を購入する時どんな考え方を大切にされているんですか?

横山:僕はワクワクを感じられる物件以外は買わないと決めています。利回りとかキャッシュフローよりも、自分の気持ちが盛り上がる方が優先です。
だから大家業が本当に面白いですし、仕事してるのか遊んでいるのか分からない状態でずっとつくり続けている感じです。「空いた部屋や共用部をどう変えようか?」「次はどんな企画にしようか?」と考えている時間がすごく楽しくて。
あと自分の場合は「旅する大家」としてやっていますので、「電話受付サービス」とか「24時間事故受付サービス」とか、外部サービスもうまく使うことで、旅をしながらでも自主管理の大家業を続けられる仕組みをつくる試みも楽しんでいます。

室田:いいですね! 本当に、僕たちの考え方と共通点が多いです。ちなみに最近の「サラリーマン大家ブーム」についてはどんなお考えですか?

横山:すごいといわれているカリスマ大家の基準が、資産規模やキャッシュフローの大きさだけで語られるような、結局お金をいっぱい残せたもの勝ち、みたいな価値観は、まったくポイントがずれているし、面白くないと思います。今はまだ残念ながら、大家業をやっている人の多くが、株とかビットコインとかをやっているような感覚なんじゃないかなって。
大家業ってどうやっても、人と関わるんですよ。だから数字だけ見て人と関わる気がないなら、ネットだけで完結する株だけやっていればいいのに、株の感覚で大家業に関わる人が多いから、今みたいな愛がない賃貸物件が溢れかえる世界ができあがったんだと思います。

室田:いわゆる世の中で成功しているといわれる大家さんのイメージが、いい車に乗ったり、頭にサングラス乗せて世界中のビーチに行ったり、高級ホテルの写真を投稿する、キラキラした人たちという状況も気持ち悪いですよね。

横山:大家業でお金が稼げたとすれば、それは入居して下さる皆さんのおかげで、お金持ちになったからってそれを誇示するようなのは、まったく同意できませんね。

室田:不動産賃貸業に関する最近の大きな話題といえば、スルガ銀行の不正融資から派生する、一連の「かぼちゃショック」だと思いますが、それに関してはどんなお考えですか?

横山:こんなこと言うと叩かれちゃうかもしれませんが、確かにだまされた面があることも否定はできませんが、それでも不動産をちゃんと勉強した身からすると、少し調べれば絶対におかしいと分かるはずだと思います。
不動産投資ってよくいいますが、不動産賃貸業ってやっぱり事業なので、どれだけの賃料からどれだけのローンを支払って、どの程度のリスクがあるのかをよく分析して、事業計画書がつくれるくらいの最低限の知識はちゃんと持っていないといけませんよね。

室田:確かに、 “投資”という響きが、株やビットコインに近い印象を与えてしまう面もあるのかもしれませんね。
僕たちも、大家業をお金儲けのための副業ではなく、楽しめるホビーとして捉え直すことで、素敵なコンセプトや不動産の楽しみ方を持っている大家さんが出てきて、それを他の人が真似したり、さらにアップデートしたりするような世界をつくってみたいと考えているんです。
“おでこサングラス”にはどうしても憧れが持てないですが(笑)、不動産業を心から楽しんでいる大家さんが増えたら、きっと憧れの職業にもなり得ると思っています。
いつか不動産が物件の魅力だけでなく、「あの大家さんの物件だから借りたい」といって選ばれるような時代がくることを夢見て活動していきたいと思います。
大変参考になる、またワクワクするお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

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