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column 2017.3.24
 
【連載】街を面白くするルールをつくろう
第1回 今なぜ、僕らがルールを語るのか?
林 厚見(東京R不動産/SPEAC inc.)
 

日本の街が面白く幸せであるために、新しいルールが必要なんじゃないか? というテーマで、西村 浩さん(都市・土木・建築デザイナー)と、東京R不動産の馬場正尊・林 厚見の3人で座談会を行いました。この模様を3回に渡ってお届けします。

ワークヴィジョンズの西村 浩さん(右)を迎えて座談会を行いました

林:まずこの企画の背景をちょっと説明します。僕らはR不動産を通じていろんな物件と人をつないできたわけですけど、それは単に古い建物バンザイという話じゃなくて、元をたどれば「街を面白くしたい」というのがあって、R不動産はそのための一つの手段なんだと思っています。僕らなりの小さな都市計画というか。

馬場:まあそうだよね。不動産屋やるのが目的だったわけじゃないし。具体的な場所をつくったり、リノベしたりもしながら、街に面白い場所を増やしている、と。

林:で、いろんな空間をつくるのも、つなげるのも、街を面白くしていく方法なんだけれど、僕らの仕事は当然、法律とか条例とかいろんなルールの中でやっているわけです。でもそのルールが自由で面白い発想を阻んでるなとか、街の姿をおかしくしているな、と思うことって多いですよね。あるいは逆に、こういうルールがあったらいいんじゃないかとか。そこで、そのあたりの話を面白くかつ現実的に共有・発信していくウェブメディアを立ち上げようと思っています。今日はそのイントロです。

西村:なるほど。そうした話がわかりやすく世の中に伝わる場は、今まであまりなかったよね。関心は高まってると思う。そういえば前に馬場さんが国交省に直談判しに行った記事があったよね。空き家問題で騒いでいるのに、古い建物の用途を変えるには高いハードルがあって、まずいでしょっていうやつ。

林:ありましたね。でも僕らも今まで、法律をはじめとした街のルールを良くするための動きって、それほどしてきたわけじゃないなと……。今は昔のように、都市のかたちを誰かが強い権力でつくるってことはできないから、ルールに従って動く多くのプレーヤーたちが、いわば自然増殖的につくりあげているわけです。実際、建築基準法とかの法律で、建物の形はかなり決まってくるし、この場所では店をやっちゃいかんとか、そういうルールという“OS”が街の姿をデザインしてるともいえますよね。でもその“OS”には多分バグのようなものもあるし、柔軟に使いこなすにはちょっと重い。これをもっとクリエイティブに変えていくことは大事だし、そのために僕らは知恵を出したり、叫んだりしてもいいんじゃないかと思うわけです。

西村:今日はちょうど国交省で、新しいルールの話を聞いてたんだけどね。国はかなり動いているなと思ったんだよね。なかなか面白い状況になってきてるなと思った。ただ、なんか僕らの周りのまちづくりやってるアツい人たちの熱量みたいなものと、上の方でやっている議論の雰囲気は、けっこうギャップがあると思ったんだよね。

三軒茶屋の「三角街」にある横丁

横丁の容積移転

林:なるほど。そのギャップを埋めていくようなことをしたいんですよね。ところで僕は都市のルールに関していうと、個人的に思いが強いのは「横丁をなくすな!」ってやつなんですよ。武蔵小山の路地街はなくなってタワーが建つし、今住んでいる三軒茶屋の三角街(ごちゃごちゃの細い路地に飲み屋が密集している一帯)も、再開発の噂が絶えない。僕はああいう空間が好きなので残ってほしいし、東京の魅力とか競争力といった視点でいっても、なくならない方がいい。

馬場:だよねえ。でもその敷地だけで考えるなら、超高層にしてしまった方が地主は儲かるから、どうしても消えていくわなぁ。

西村:それを規制すると、それこそ財産権の侵害みたいな話も出てきちゃうしね。

林:地主にとっても、ディベロッパーにとっても、その方がありがたいのは当然ですからね。だけど東京にとってああいう場所があるのは、経済的な意味も含めて価値がある。10が1になっていくのは仕方ないけど、0にしてはいけないっていうものはありますよね。ああいうのは、まさにそれだと思うんですよ。

馬場:長期的に考えればそう思うよね。そういえば東京駅の駅舎って色々あったけど、結局残ったよね。

西村:あれは向かいの東京中央郵便局のビルに、容積率を移転したんだよね(注:東京駅の上を高層化して建てられる分の権利=空中権を、東京中央郵便局など周辺の土地所有者に売った)。横丁も同じことやればいいってことじゃない?

東京駅(左)は高層化できる分の権利=空中権を、旧東京中央郵便局(中央)など周辺の土地所有者に売ることで500億円とも言われる改修費用を捻出した

林:あ……そうですね。「横丁の空中権売買」をやる、と。地主たちは高層にすれば利益が得られる立場だから、低層の状態のままにしろといきなり決められたら「ふざけるな!」となるけど、その機会利益みたいなものを、ある程度与える方法ってことですね。かなりアリな感じがします。

馬場:あとさ、横丁とか木造密集エリアって、防災の話があるよね。火事で消防車が入れないっていう。防災・安全っていうのは何より強い話だし、実際に大事だから……これはどうしよっか?

西村:消防は……地面に機械を埋め込んでおいて、バーっとやるんじゃない?

林:ドローンから水をまくとか。

馬場:木造でも防火仕様にする方法も、けっこうあるんだけどね。あと耐震の話もあるけど、それはむしろ木造でも補強はできる。防災の話は、技術でけっこうカバーできると思うよ。お金はかかるけどね。

西村:必要な防災対策をすれば容積率・空中権を売ることができて、コストや利益も捻出できる、みたいなイメージで考えるんだろうな。

林:それって今のルールではできるんですかね? 特例地区とか、そういうやつだと思いますけど、自分も知識が足りていないので、そのあたり学んでいきたいなあ。

(第2回に続きます)

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