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column 2015.6.19
 
【連載】最前線レポート! 規制緩和とリノベーション
第2回 国土交通省副大臣に直訴!
馬場正尊(東京R不動産/Open A)
 

変化の時は今だ。リノベーションによるストック活用の前に立ちはだかる、法規制の壁。その現状を訴えようと、単身乗り込んだ国土交通省。ズラリ居並ぶ関係各局の責任者たちを前に、一点突破で規制緩和を訴えます。すると……。事態は意外な展開に。果たして動き出すのか? 体当たりレポート第二弾!

(illustration=東海林巨樹)

前回レポートしたように、ビル一棟を丸ごとリノベーションしようとする場合、様々な制約がある。

僕らはデザインよりも、まるで地雷原のような規制だらけのフィールドを慎重に、それを踏まないように物事を進めることに膨大な時間と書類を費やし、神経をすり減らす。

さらにクライアントが大企業になると、コンプライアンスがとても厳格に求められる。だから、ちょっとした法律の網にかることにより、本来ならば素晴らしく再生できそうなビルを「もったいないなぁ……」と言いながら放置する、というパターンが頻発した。

これはリノベーションの現場で働く人々なら、みんな実感していることだろう。

僕らはそれをなんとかしたい。行政も、そこに課題があることが分かっている。同時にそれは“パンドラの箱”でもある。規制緩和や法律の改正には膨大な労力や調整が伴うだろう。

しかし、かつてのように新築をつくり続けることで国の経済的な基本構造を支えきれるほど、日本は悠長な状況にないことは、誰もが知っている。だとするならば、変化の時は今だ。

そんなことを悶々と思っているときに、意外な機会が転がり込んだ。僕が国土交通省副大臣に直訴することになったのだ。今日は、その時のやり取りをレポートする。

副大臣に直訴する機会がやってきた

テレビの番組で鶴保国土交通省副大臣と一緒になり、スタジオの控室でしつこく建築基準法の規制緩和について話したら、「分かった、今度呼ぶので、ちゃんと話そう」と言われて別れた。相手は副大臣、まあ社交辞令だろうと思っていたたら一週間後に本当に電話がかかってきた。

そういうわけで、短いメモといくつかの実例の図面と写真を持って、国土交通省の副大臣室に向かった。

室内に入ると、人がズラーっと並んでいた。「こ、この人たち何なんだろう?」。一瞬面食らったが、名刺交換をすると、審議官、建築指導課、観光庁の課長など、関係各局の責任者たちが勢揃い。「こりゃ、本気だ」。さすがに緊張した。

時間もないだろうから、お礼を述べた上で間髪入れずに説明に入った。僕が直訴しようと思ったのは、ほぼ一点。「検査済証」なしの建物に対して、リノベーション可能な手続きルートの整備。いろいろ言っても伝わらないと思ったし、場所が場所なので、シンプルなメッセージをズドンと伝えることが大切だと思ったからだ。

あまり知られていないことだが、実は既存建築の半数以上が現在、「検査済証」なしの状況にあると言われている。

それらは着工前に確認申請を行っているものの、竣工時の「完了検査」を受けていない。よって「検査済証」を交付されていないため、正確に言えば、それ自体が手続き違反で、使用してはいけない状態にある。

つまり市民の半数以上が、手続き違反の建物の中で生活していることになるのだ。しかし、それはこれまで放置もしくは黙認されてきた(近年は、是正の傾向にある)。

そのことを国土交通省も認識はしていただろう。しかし、それをまともに是正し始めると、半数以上の建物が違法ということになり、まさにパンドラの箱を開けてしまうことになるのだ。基本的にそれを黙認していたことは、政府の賢い判断であっただろう。それくらい現実に即した冗長性が、法律にはあっていいと、個人的には思う。

しかし、それが既存ストック再生の大きな障害になっている。「検査済証」なしの建物自体が違法性を帯びているため、それをリノベーション・改装することも違法性を帯びることになる。これが、僕らリノベーションをする設計者や開発者にとっては、大きな足かせとなっているのだ。

そのため、大手企業(ディベロッパー、ゼネコンなど)はコンプライアンス上、「検査済証」なしの建物には手が出せない。それが既存ストック再生の大きなブレーキとなっているのは言うまでもない。

特に問題になるのは「用途変更」の確認申請。建物が健全な状態にあっても「検査済証」がない、というだけで用途変更の確認申請を受け付けてくれない。結果、どんなにいいアイデアやデザインでリノベーションが可能であっても、その一点が阻害要因となり再生を諦めた建物がどれほど多かったことか。コンプライアンスを遵守する事務所、企業であればあるほど動きにくく、それが投資を阻害している。

僕は、できるだけ冷静にその実情を伝えた。

議論は大紛糾、国も案外本気だ

この日、面白かったのがその後だ。
「それを放置していたとするなら、行政の怠慢と言われても仕方がないんじゃないか?」
副大臣が、かなり厳しい口調で切り出した。

僕は、パンドラの箱を放置するしかなかったのは、現場に立つ者として分かっていたから、そこはフォローした。そして「検査済証」なしの建物に対し、何らかの手続きを経て、それに代わるオフィシャルな証書を発行するルートの整備を訴えた。

そこから各局課長を交えたブレストが始まる。国の担当トップによるディスカッションである。そしておぼろげながら、「それはあるかもしれない」と思えるルートが見え始めた。

検査済証がない建物を用途変更する場合(確認申請をしたい場合)、確認申請の審査を行う民間審査機関が既存建物を検査し、当時の基準法に照らして適法かを現地審査。それを当時の適法状態にまで戻せば、検査済証に代わる証書を発行する、というルートだ。国はそれをオフィシャルなものとして承認する。

これがあれば、用途変更の確認申請を受け付けることが可能となる。審査機関の新たな収益にもつながるし、行政の手続きや負荷もそれほど増えることはない。

設計や投資をする企業にとっても手続きがシンプル。さらに建物の安全性も保たれ、不健全な状態にある建物を健全化する動機にもなる。この証書があればリノベーションもストックに対する不動産取引もやりやすくなり、活発化へと導くだろう。みんながちょっとずつハッピーなはずだ。

「確かに、それはあるかもしれない……」
その場にいたみんなが、そこに光を見た。
副大臣は、「よし!とにかくこの問題はなんとかしよう。いつできる?」と。
さすが政治家だ。ドラマみたいだった。

その後、リノベーション特区を設定することを提案したり、昭和25年にできた基準法の用途分類を再編成すべきだとか言ってみたが、まあそれはあまり刺さらず……。僕も、検査済証の問題がクリアできれば、これらはなんとかなるかなと考え、深追いはしなかった。

一時間弱のミーティング。これが通れば、既存ストックのリノベーションに新しい道が開ける。果たして動き出すだろうか。

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