「都市と循環2026 都市は発酵するのか?」イベント・レポート
2026年5月14・15・16日に京都・二条にて開催した「都市と循環2026」のレポートをまとめましたので報告させていただきます。

多様な分野の実践者が集い、これからの状況をどう創っていくかについて横断的に対話しながら新たな関係を結んでいくフェスティバル「都市と循環」。今年は2026年5月14-16日、京都・二条の旧・京都市児童福祉センターの建物を活用して開催しました。今までで最も大掛かりなイベントとなり、3日間を通じて全国から集まった人々は3日間で延べ約1500人。このイベントは2023年からもう4年にわたり年に一度開催してきましたが、回を追う毎に、その熱量が高くなっていることを体感しています。

「都市と循環2026」に登壇やパフォーマンスでご参加くださった方々。70名に上った。 顔ぶれとプロフィールはこちらから。https://cccf.jp/#participants

今回会場となった「旧・京都市児童福祉センター」。2024年1月に移転して未活用施設となっていたが、「都市と循環」が場を開く実験の役割を果たした。
今年のカンファレンスでは、「未来の古民家」「仏教と循環」「工芸と循環」「教育と循環」「木造と循環」「デンマークと循環」「米と循環」「古楽器と循環」「建築と循環」「死と循環」「台湾と循環」「マテリアル/エネルギー」「和食と循環」「里山と循環」「水と循環」「発酵と循環」「アーティスト・イン・レジデンスと循環」「スポーツと循環」「お金と循環」「振り返りセッション」、20に及ぶトークセッションを行いました。

「ヒューマン・スケール」を一貫して追求し続けてきた建築家、ヤン・ゲール氏。会場とデンマークをつないで対話を行った。
キーノートは、デンマークから建築家ヤン・ゲール氏を、イギリスからオープンソース型住宅建築の活動「WikiHouse」を牽引するアラステア・パーヴィン氏を招聘し、会場とオンラインでリアルタイムにつなぎ話を聞きました。パフォーマンスグループdumb type(ダムタイプ)創設メンバーのひとりであり90年代からは共有空間についてのさまざまな実験を展開されてきた美術家の小山田徹氏にもキーノートで登壇いただきました。

実験寺院寳幢寺僧院長・松波龍源氏を招いて行った「仏教と循環」。

「建築と循環」より、建築家・塚本由晴氏のコメント(右手前)「これからは事物連関型のデザイン知性が重要になってくる」。

松井孝治京都市長も参加した、「アーティスト・イン・レジデンスと循環」トークセッション。
これまで同様に職種はさまざま、建築家、僧侶、工芸作家、保育園経営者、建設業者、不動産事業者、食育研究家、農家、音楽家、楽器製造者、まちづくり事業者、狩猟者、葬送事業者、水インフラ事業者、設備エンジニア、森林環境コンサルタント、ファッションデザイナー、酒造業者、都市デザイナー、老舗和菓子舗オーナー、現代美術作家、投資ファンド運営事業者、DAO運営事業者、コミュニティツーリズム事業者など、多岐にわたりました。昨年同様、京都市長にもご参加いただきました。
興味深かったのは、分野もテーマも多様でありながら、そこでの気づきやこれからの社会に対する方向性にはかなり共通の視座がどの登壇者からも示されていたことです。この辺りの詳しい考察に関してはまた実行委員会中心に整理して後日ドキュメントをアップさせていただければと考えております。
⇒全トークセッションのタイムテーブル https://cccf.jp/#timetable
今回、展示会は建物の1階と2階と中庭を使って大規模に展開され、合計81の事業者がそれぞれの世界観を発揮した展示で活動をアピールしました。「未来の古民家〜私たちがつくる住まいは200年後の子孫から“古民家”と呼ばれるものたりえるか?」という問いをテーマにした今回の展示会では、再現された自然葬の森、解体材の展示・販売、里山の丸太を使った棺(ひつぎ)、小規模分散型水循環システムの実物、リサイクルタイル、淡路産の瓦、寄付の要素が付いている電力小売事業等々展示されました。出展者の皆さんには個々の活動を紹介するためのスピーチタイムも設けさせていただきました。それぞれの事業者が領域を切り拓いてきたパイオニアだけに、現地でスピーチを聞かれた方は、その事業自体への共感や関心を持つだけでなく、自身のしている活動へのヒントともなり、有益なフィードバックが得られたのではないかと思います。

展示会の様子。テーブル、ブース、ルームの3種類があり、それぞれ独創的な展示が目立った。

「未来の古民家」展示会は、出展者と来場者のコミュニケーションの機会であると同時に、出展者同士がつながるネットワーキングの場ともなった。

「循環葬RETURN TO NATURE」の展示。お寺が所有する森の土に埋葬する自然葬の事業を行っている。

岐阜県中津川市で古民家改修や古材のアップサイクルを行っているNPOの展示。

小規模分散型水循環システム「WOTA」のブース。被災地での運用も活発に行われている。
⇒「未来の古民家展示会」出展企業一覧はこちら https://cccf.jp/#exhibitors

オランダ人アーティスト、サンダー・ワッシンク氏によるアートワーク「私には、育てることのできなかった果実」。

フランス人デザイナー、イザベル・ダエロンによる、京都の地下水盆をテーマにした「地下水Café」。

地下の印象を一変させた、PsysEx×SPEKTRAによる音と光のインスタレーション。

清水寺の古材を用いて中世の楽器クラヴィコードを製作した音楽家・内田輝さんによる演奏。

使われなくなった電化製品を電子楽器として蘇らせる「ELECTRONICOS FANTASTICOS!(エレクトロニコス・ファンタスティコス!)」和田 永さんのパフォーマンス。
アーティストによる作品展示や音楽パフォーマンスも、「都市と循環」においては大切なパートです。オランダ人アーティスト、サンダー・ワッシンクさんは、物や空間が時間、文脈、使われ方によってどう変化していくのかを探求しており、今回は巨大な足場と、果物、ジュース装置からなる作品を展示し来場者が多く体験しました。フランス人デザイナー、イザベル・ダエロンさんはかつて児童センターのホールだった空間に京都の地下水を体験するカフェをデザインしました。使われる前はどこか不穏ささえ漂っていた地下空間に、アーティスト集団PsysEx×SPEKTRAは、光・霧・音のインスタレーションを設置し、まるで最初からこの演出のためにあったと錯覚する程に馴染んでいました。
演奏は、1日目の夕暮れ時に、クラヴィコードという中世の古楽器のライブが行われ、参加者たちは日が落ちる闇のなかで耳の感覚に研ぎ澄ましました。2日目には、使われなくなった家電を電子楽器として蘇らせる「ELECTRONICOS FANTASTICOS!」のパフォーマンスが行われ、参加者は高揚感と祝祭感を味わいました。
その他、絹織物と森のつながりをテーマにした映画の上映や、漆を用いて椀をリペアするワークショップも行われました。夜には交流会が催され、登壇者、出展者、アーティスト、来場者、その他関係者、みなさんが分野を超えて関係を築きました。

漆でお椀をリペアするワークショップ。

「都市と循環2026」参加者層の業種別分布。
今回、来場者層で顕著だったのは、若年層のチケットの売れ行きが多く、会場での若者の姿が多かったことです。「都市と循環」は、未来を想う大人たちの本気のフェスですが、それに若い人たちの真剣な将来への眼差しが呼応したと言えるかもしれません。
「都市と循環」は説明することの難しい多義的なイベントです。ただ、来場された方はこのイベント特有の不思議な熱量を体感し、面白い人々が絶えず行き交い、そこここで対話が繰り広げられている光景を目の当たりにしたはずです。このフェスティバルの空気感は、登壇者、出展者、アーティスト、そして来場者の皆さんも含めて、全体から生み出されるものです。今年の「都市と循環2026」のテーマは「都市は発酵するのか?」でしたが、確かにこの場は濃密に発酵していました。来年はより関係性を拡げ、味わいも一層深くできればと思っております。ご来場いただき、ありがとうございました。1年後に、またお会いしましょう!
記事中写真=市橋正太郎
映像=藤田 育
都市と循環 Circular Cities Conference & Festival
https://cccf.jp/ Instagram @cccf.jp
会期:2026年5月14日(木)、15日(金)、16日(土) 3日間
会場:旧・京都市児童福祉センター(京都・二条)
主催:「都市と循環」実行委員会(事務局:R不動産株式会社)
共催:京都市
ディレクター:吉里裕也・小泉寛明・小津誠一・安田洋平・安居昭博・伊東勝・菊地雪代
ローカルディレクター:水口貴之(株式会社51ActionR&D / 京都R不動産)
展示会サポート:real local
施工:TEAMクラプトン
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