2024.11.2 |
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世田谷で集落のような場所づくり -11/16 上棟式&餅まき-
世田谷で「100年後も残る風景」を考える大家さんのもと、これからの暮らしのヒントになるような場所づくりがていねいに進められています。賃貸でも暮らす前から関われるこの場所では、子育て世代に向けた長屋をただいま建築中。まずはその様子をのぞきに、上棟式と餅まきへ来てみませんか。
世田谷で活動している大家の安藤勝信さんとの出会いから、参加することになったこのプロジェクトは、仙川のほとり、懐かしい団地や緑地が広がるのどかなエリアが舞台になっています。広い世田谷区は、知っているようでまだ探りきれていない場所が意外とあり、ここ大蔵もそんな場所のひとつでした。
すぐ近くを流れる仙川
世田谷のイメージとかけ離れたのどかな場所です
プロジェクトの発端は、都市計画道路の開通でした。都市農家だった祖父母から安藤さんが引き継いだ土地は、道路の開通によって二つに分断され、建物は取り壊しを余儀なくされることに。
もとは広い畑と実家と賃貸アパートがあり、餅つきなど地域の人が自然と寄り合うことも多かった場所は、あっという間に一変してしまいます。
変化に翻弄されながら、安藤さんは考えます。
単に受容するでもなく、抗うのでもなく、大切なものを形を変えながら守っていくことを。これまで育まれてきたこの土地の歴史や記憶、いまを生きる私たちの暮らし、そして100年先に続く社会を想像しながら、時代や環境の変化に合わせて、そのときを生きる人が変えていったらいい、変えながら守っていけるように。そんな思いで、これからの活用を計画しました。
その名は「三年鳴かず飛ばず」プロジェクト。スピードや効率重視で進みがちな都市や住まいのあり方に、一石を投じるようなネーミングが、いかにも安藤さんらしいスタンスを物語っています。
100年後につながる風景をつくろうとしたら、その検討や実行に時間がかかるのは当然のこと。さまざまな立場や分野の人を巻き込みながら知見を持ち寄って、機が熟すのを待つようにいまも議論は続いています。
道路が通る前の大切な土地の記憶
季節行事などのたびに近所の人が寄り合う場所でした
道路を挟んで二つに分断された土地は、それぞれ異なるコンセプトで場所づくりが始まっています。
先行して進んでいるのは「時代に合わせて変化する風景」を目指した小屋プロジェクト。畑を残した土地を生かしながら、単身者向けの小さな小屋型住宅を点在させる計画です。
時代の変化に応じて、将来的に建物を移動したり畑に戻すこともあるだろうと、撤退に適したつくりを探し求め、石場建てという昔ながらの工法に辿り着きます。コンクリートの基礎を流さず石の上に柱を建てるので、環境への負荷が軽減できるのも理想的なうえ、住まい手と一緒にセルフビルドを企めそうな展望まで見えてきました。
敷地内には、マザーハウスと呼ばれる母屋のような家が完成し、2階には地域のお母さん的存在の方が暮らし始め、1階のキッチンや団らんの場は小屋の住まい手もシェアできるようになっています。目の前の畑で野菜を育て収穫し、仲間と共に食卓を囲むことができたりと、小屋は狭くても豊かな暮らしが実現できる場をつくろうとしています。
最小限で設計された小屋型の家、石場建ての浮き床で今後はセルフビルドも視野に入れています
畑を残した敷地にマザーハウスとまずは小屋を1つ、計画はまだ続いていきます
なにかと人が集まる場はマザーハウスの1階に
「100年後も残る風景」を目指しているのは、建築中の長屋プロジェクト。
ここでは子どもたちが心豊かに成長できる場所づくりも大事なテーマになっていて、家族以外にもいろいろな大人がいることを感じてもらえるよう、子育て世代が暮らしの一部をシェアしながら、自然なつながりを育める場を計画しています。
つながりのきっかけを生むのは、長屋の1階につくられた安藤さんの実家に代わるセカンドハウス。長屋の住まい手たちとこのスペースをシェアすることで、それぞれの住居では実現しきれない場や体験を分かち合えたらと考えました。
大勢で集まれるリビングやキッチンなど、機能面でのシェアはもちろんのこと、子どもたちの記憶に残る原体験って何だろうと、畳の香りや手触り、襖や障子の開け閉め、薪をくべるストーブ、屋根裏部屋のワクワクなど、シェアしたい感覚も散りばめられています。
建築中の長屋は2階建の3区画、1階は安藤さんの家となりここでシェアを計画中
残った畑を囲むように、2つの土地でテーマを変えた取り組みを進めています
このプロジェクトではコンセプトやテーマ以外にも、視点の異なる話題が次々と飛び出ては、同じテーブルに乗せられて、どんなことも意見を交わしながら進めていくのが当たり前になっています。
ルールが上からおりてくる賃貸住宅とは違って、ここでの暮らしもそんなふうに風通しのいいスタイルがよく似合います。大家さんも住まい手もフラットにお互いを尊重し、与えられるのは待つのではなく、自分たちの暮らしを自分たちで耕していく。これからの集落では、と思える場所です。
左から3番目、パーカーの男性が安藤さん
大家さんとは本来「人と人との関係性をデザインし、見守って育む仕事」だと言う安藤さん。それぞれの人が持っている力をていねいに観察しながら、その場所に暮らす人たちの力を最大化し、やりたい人がやれる場所をつくることが、地域への貢献にもつながっていくという考えです。
さまざまな大家さんに関わる身としては、安藤さんが目指す仕事の果てしなさを感じずにはいられません。と同時に、このプロジェクトに参加して、大家さんだからこそ挑戦できることの奥行きを知り、小さな社会を変えられることも実感して、待ち受ける未来に希望の光も見出しています。
人間らしい営みや本質的な豊かさについてもたくさんの気付きがあり、まだまだ発見が続きそうな「三年鳴かず飛ばす」プロジェクト。言葉だけで伝えるのはとても難しいので、起きていることや関わっている人たちを、ぜひ現地で感じ取ってもらえたらと思います。
来春の長屋の完成に向けて、暮らす前からこの場所に関わりたい住まい手もゆるく募集をしていきます(長屋は3区画、65㎡ほどの2階建て)。
といっても賃料などの条件はまだ決まっておらず、人や場所との関係づくりを先に始めるのが安藤さんのいつものスタイル。住まい手がどんなことを考えどんな暮らしを実現したいのか、契約より先にお互いを知り合う過程を大切にしています。
11月16日には上棟式と餅まきを開催予定で、特別なお構いはできませんが、この場所をふらりと覗いてもらうにはいい機会になっています。
親交を深めながら、長屋での暮らしを一緒に待ち侘びる仲間が増えたらうれしいですし、餅まきには参加できなくてもプロジェクトに興味があるよという方も、フォームから登録をしてみてください。今後お知らせできることがあった際には、情報をお送りします。
「三年鳴かず飛ばず」プロジェクト
上棟式&餅まき
日時:2024年11月16日(土)10:00~(雨天の場合は17日に順延)
住所:東京都世田谷区大蔵(詳細は登録後にお知らせします)
餅まきの参加、入居の検討など、情報をご希望の方は、こちらのフォームからご登録ください。
申し込みページ(Googleフォーム)