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column 2018.4.6
 
公園に泊まろう! 「INN THE PARK(インザパーク)」
馬場正尊(東京R不動産/Open A)
 

東京から車で1時間半の森の中に、新しい宿を始めた。元は自治体の“お荷物施設”だった、広大な芝生広場や、森の中のコテージ。でもそれは僕らの目には“お宝”にしか見えなかった。次々と閉鎖されていく公共施設。それはちょっとのアイデアや資金で生まれ変わらせることができる。思いがけず自分たちで運営をすることになった宿は、こんな風に始まった。

撮影:阪野貴也(1、8~14枚目の画像)

プロジェクトのきっかけ

「公園に泊まろう!」をテーマにした、新しいタイプの宿「INN THE PARK(インザパーク)」は、東名高速道路の沼津I.Cを下りて10分ほどの、愛鷹(あしたか)運動公園の中にある。

元は「沼津市立少年自然の家(以下、少年自然の家)」。小学生たちが林間学校で泊まった施設で、たくさんの沼津市民の記憶に残っている場所だ。

約40年前に建てられ、当時は多くの小学生たちで賑わっていただろう。ただ少子化や教育プログラムの変更で、昨今はめっきり使われなくなり、維持するだけでも年間数千万円の赤字を出す“お荷物施設”になっていた。

沼津市は対策として、この「少年自然の家」を民間に賃貸し、財政負担を軽くするのと同時に、時代に合った新しい使い方を模索することにした。

「募集を手伝ってもらえないだろうか?」

グループサイト「公共R不動産」へ沼津市の担当の方が相談に来たのが2年前。

「もちろん! 協力します。面白そう!」

ということで僕らは早速、取材に現地を訪れた。

竣工当時の写真。芝生と一体化した少年自然の家

コテージに囲まれた丘で自然学習をする児童

懐かしい空間

そこには何ともいえない懐かしさがあった。小学生の頃の思い出がよみがえってくる。場所は違うけど、誰もが似たような空間を体験してきたはずだ。

老朽化してかなりくたびれていたが、そこに残る独特の雰囲気に、僕らはすっかりやられてしまった。

コテージの中には、子どもサイズのベッドがぎっしり並んでいる。

高い天井で板張りの個室

食堂にはテーブルと椅子がずらっと並び、賑やかだった頃の面影を残していた

そして、僕らを感動させたのが、目の前に広がる気持ちの良い芝生のフィールド。緩やかな起伏と、そこに立つ巨大な樹木。年齢を忘れ、本能のまま芝生にダッシュした。

圧倒的な気持ちの良さだった。

かなりボロボロだけど、この施設のポテンシャルを伝えようと、公共R不動産で紹介した。

コテージの目の前に広がる広大な芝生広場

自分たちで応募してもいいんじゃない?

公募の締め切りが近づいてきたある日。メンバーの一人が、ふとこんなことを言った。

「沼津のあれ、どうなったかな? 自分たちが、公募に参加してもいいんじゃないの?」

確かにそういう考え方もあり得る。僕らはすっかり、あの時に見た空間と公園の風景のとりこになっていた。

芝生で子どもと走りまわる風景。リノベーションされたコテージに泊まる風景。みんなで火を囲んでバーベキューをする風景……。

いったん考え始めると、妄想は止まらない。そのまま一気に企画書を書き上げてしまった。こうなったら提出するしかない。

その時の企画書がこれ。

妄想が膨らんで、一気に書き上げた「泊まれる公園」の提案書

予想外の展開

ある日、事務所に連絡があった。

「沼津市役所ぬまづの宝推進課です。選考の結果、御社と交渉することになりました」

予想外の出来事だった。

いや、こっちで提出してるのだから予想外というのは正確ではない。ただ、まさか宿泊施設運営の経験もない小さな会社が選ばれるわけがない、とたかをくくっていた。

後で分かったことだが、最終的に公募に参加したのは1社だったらしい。

「ありがとうございます。この後どうすればいいでしょうか?」

「まず、御社にミーティングに参ります」

電話を切ってから、やっと物事を冷静に考え始めた。勢いだけで提出してしまった企画書。でも選ばれてしまっている。状況としてはやるしかない。しかしやるといっても何ら経験がない。果たして何から考え始めたらいいのだろうか。宿泊施設の設計はやってきたけど、経営はやったことがない。それどころか想像したことも正直、なかった。

とんでもないことになったのかもしれない。と思いながら、僕らはなんだかワクワクしていた。あの空間を、自分たちの想像力で変えていくことができるのだ。

沼津市や国土交通省、 出資をしてくれた「ぬまづまちづくりファンド」、そして融資をしてくれた沼津信用金庫の担当者がこの原稿を読んでいたら、今頃きっと青ざめていることだろう。

こんなことを正直に書いていいのかわからないけど、とにかくプロジェクトは始まった。仕事とは、時にこのように、何かに導かれるように始まるもののようだ。

コテージは木立の中に、いい感じでたたずんでいる

宿泊棟は広めのツインルームに。少し懐かしい空気を残しつつ、さっぱりしたデザインに

INN THE PARK、オープン!

そこから怒涛の日々が始まるが、採択の連絡から1年半経った現在、「INN THE PARK」は無事にオープンしている。

企画書で妄想したことが、ゆっくりだが一つひとつ実現している。まだまだ理想の姿には程遠いが、ちょっとずつ試行錯誤を繰り返しながら空間を、サービスを、新しい公園の楽しみ方を、つくっている。

宙に浮く特注の「ドームテント」。自然の音や光を感じながら泊まることができる

中にはベッドがあって快適。テントはちょっとつらいけど、自然の真っ只中で寝起きしてみたい、という方に

一度では語り切れないが、この場所ならではの特徴や魅力はまだまだある。そこでこれから数回に渡り、INN THE PARKが出来上がるまでの過程を、公共R不動産で連載していく予定だ。

公園を借りるスキームや資金調達、運営するときにぶち当たった壁や、地域との関わり方なども伝えていきたい。

日本にある不動産資産の24%を占めるともいわれる公的不動産。つくる時代は終わり、これからはコストをかけずに、サービスの質を保ちながら維持していく時代だ。

このINN THE PARKのように、役目を終えても少しの工夫で有効に使える施設は山のようにある。

2014年、国から全国の自治体に、保有する施設のマネジメント計画をするよう要請が出され、公共施設は今まさに活用が始まったところ。中にはまだまだ魅力的な物件が眠っているし、周辺相場よりも良い条件で借りられることもあるので、新しいビジネスチャンスにもなるはずだ。

そんな空間を使って何かやってみたいというご希望や、ポテンシャルを持て余している物件の情報などがあれば、ぜひ公共R不動産までお問い合わせを。

公共R不動産

食堂だった場所はサロンに。窓からの緑を借景にした広々とした空間は、小さな公園のようなイメージ

炊さん場は屋外のレストランのようなラフな雰囲気に。自分で肉や野菜を焼いて楽しむ。食材は地元で探しまくった

芝生の広場。ここは公共空間ではあるけれど、宿泊者にとっては自分の庭のようなものだ

INN THE PARK(インザパーク)

所在地:静岡県沼津市足高220-4
アクセス:
車の場合
東名高速道路「沼津」I.Cより約3.5km(車約9分)
電車の場合
東海道本線「沼津」駅 約7km(タクシー約18分)
宿泊料金:12,150円(税込)/人~(夕朝食付き・宿泊棟大人8名利用時)
宿泊定員:吊テント2名×1棟、ドームテント2名×3棟、宿泊棟8名×4棟
詳細・ご予約:以下のリンクよりホームページにて
泊まれる公園「INN THE PARK」

INN THE PARKでは若干名のスタッフ、アルバイトを募集しています。

この空間で働いてみたい方、試行錯誤しながら一緒にこの場所をつくっていきたい方、宿泊施設の現場を経験したい方など、リンク先にて詳細情報をご確認ください。

運営スタッフ募集|泊まれる公園「INN THE PARK」(Open A)

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