2009.4.21 |
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店舗物件が着物染色作家のアトリエに
モノ作りのための空間に良さそうだ、ということで「創り場」というタイトルで募集したこの物件、まさにアトリエを探していた着物染色作家の成瀬優さんが入居してくださいました。
今回ご紹介するのは、築約30年のもとバイク屋さんだった2階建て店舗兼住居物件です。現オーナーさんが購入し若手建築家に改装を依頼、バイクが置いてあったであろう1階の土間はそのまま残され、畳敷きだった2階の和室空間は、ざっくりとした板張りの明るいワンルームになりました。
主にアトリエとして使っているのは、2階のこのスペース。
成瀬さんの作業机。
左の写真は制作中の舞台衣装。成瀬さんは舞台衣装や女優さんの着物・帯を手掛けるほか、呉服屋さんからの依頼、一般の方のオートクチュールまで手掛けています。奥にいらっしゃるのが
こんな感じで着物の柄に色を入れていくそうです。
生地を染める際は、このように反物をピンと張って作業するため、物件を探すうえで重要なポイントになったのは、空間に「引き(奥行き)」がとれるかどうかだったそうです。
もともとこの物件の2階の間取りは、4帖半と6帖、そしてキッチンに分けられていましたが、現オーナーさんが改装する際に、壁や襖、押し入れが取り除かれ、木造のほぼスケルトン状態に(1枚目の写真参照)。現オーナーさんが行った改装は実にシンプルなものでしたが、むしろアトリエにはちょうどよく、入居後、汚れが目立っていた壁や天井を塗装するなど、成瀬さんご自身で手を入れたものの、空間自体はほとんどそのままお使いになっているようでした。
改装前はこんな感じでした。(画像をクリックすると拡大してご覧いただけます)
改装前の間取図。
もともと古い建物なので電気容量が少なかったり、設備は必要最小限だったり、前の入居者があまり手入れをしていなかったため、窓のサッシや換気扇、壁や天井の汚れも目立っていたというマイナス面もありました。
でも、「すべて良い環境が揃っていなくてもいいじゃないですか。そこにある環境、状況の中で自分で補いながら、やりくりしていけばいいのだから」と成瀬さん。
その言葉通り、染めた反物を水洗いするためにシャワーだけしかなかった浴室に自作の浴槽を設置するなど、足らないものはご自身で造作。改装OKの物件に入居するには、このくらいのたくましさが必要なのかもしれません。
成瀬さん自作の浴槽。
この物件への入居を決めた理由のひとつは、大江戸線の西新宿五丁目駅から徒歩7分、新宿駅からでも歩ける距離、という超都心という立地条件だったとか。もともと成瀬さんは東京郊外にアトリエを持っていたのですが、お客様にアトリエまで来てもらうこと、また、打ち合わせ等で人に会うことを考えると、やはり都心にアトリエを持ちたいと思ったのが、物件探しのはじまりだったそうです。
1階の土間空間には、新たに小上がりが造作され、着物を展示できるスペースがつくられました。今までは、アトリエが郊外にあったこともあり、作品を見てもらう機会が限られていたそうですが、今後はこの展示スペースを利用して、より多くの人に作品を見てもらう機会をもちたいとおっしゃっていました。6月より毎月第1、第2、第3土曜日の11時〜18時まで、このスペースをギャラリーとして作品展示をするそうです。
作家さんから直接お話を聞けたり、実際に着物を染めているところを見学できるチャンスはなかなかないと思うので、着物に興味のある方はぜひチェックしてみてください!
silkgallery
住所:東京都渋谷区本町4-10-3