column 2012.1.24
 

特集コラム「2011年この物件がアツかった!」

編集部
 

東京R不動産スタッフが選ぶ『2011年もっともアツかった物件』、また今年も“アツイ物件課(※)”がお届けします!

※アツい物件課とは……東京R不動産内に存在する、1度見たら忘れられない特長や雰囲気をもつ物件を「アツい!」と賞賛し評価するチーム。

「伝説の再出航」 担当:チバ

出ました! 軍艦マンション。これはもはや物件というより、2011年の出来事と言った方が正しいかもしれない。
伝説の建物がリニューアルされて久しぶりに入居者を募集し始めたという。
建築好きなら誰しも一度は観に行ってみたいですよね。外観からして尋常じゃない。その風貌、まさに軍艦。
昔、知り合いが中まで入ったことがあるんですが、エントランスとか内装も相当凄かったらしいですよ。思わずひるんだと言っていた。
1970年築のこの建物、もう長らく放置されていて、一旦は取り壊す方向で話が進んでいたのですが今回の話で建物としては残しつつ、内部はリノベーションして再賃貸することになりました。文字通り記念すべき再出航です。
外壁は再塗装され、中はスケルトンのシンプルな箱に変えられています。1フロアを小さな区画に分けて貸していて、ラウンジやミーティングスペースなど共用部が充実している。入居者は屋上も使えるのですが、ここがまた空間的にヤバいです。

まさに軍艦。

下町ラテン系
物件担当:タンザワ

ここ、室内に嫌いだなと思う要素が一個もないんですよね。
ざっくりテイストのリノベーションはよくあるけど、このテイストまで振りきれている例はなかなかない。しかもこういう色味ってともすればいやらしくなってしまいがちだけど、そうなっていないのがセンスいい。
しかもでかいバルコニーが部屋の外についているという。
売主さんは建築家さんで、なおかつブラジル音楽とダンスが大好きな方。夜はここでパーティーをして飲んで踊って楽しんでいたそうです。
この物件のもうひとつのポイントは荒川区町屋という立地。既存イメージで言えばあまり注目されていない街かもしれませんが、でも実際行くと下町でのんびりしていて、飲食店・商店街も充実している。そして都心へのアクセスが良い。しかも価格相場的に穴場感もある。
60平米でこの販売価格は魅力的ですよね。
そう。でも一番なのは、この建築家さんが本気になって自分の好きな空間を作りこんだということがこの物件全部から伝わってくることですよね。とにかく気持ちイイです。

赤い壁の質感がまたいいんです。

「潜伏拠点」 担当:チバ

これはもう「見つけた!」という感じでしょう。
ふだん見知っている新宿の街のど真ん中にありながら、えっ、こんな建物あったんだ!? という意外性が面白い。新宿駅から徒歩4分という立地にありながら異世界ですからね。広々とした敷地にこのスタイルの建物がいきなりポツンとある違和感。明らかにここだけ周りと違っている。
建物のつくりも只者ではない感じです。らせん階段があるところが個人的にはツボ。こういう特徴のある事務所物件は年に1個2個出るかという代物ですよね。事務所として使われていて個性的な一棟物件といえば、過去に紹介したこちらなどもそうでしたが、街で出遭ったら、そのまま立ち止まらずに通り過ぎることはできない存在感がありますよね。クライアントを呼んだときに、この建物だったら相当なインパクト与えられるの、間違いないですよね。

路地裏にいきなりこの建物が現れます。

「運河ビューのL字土間を使い倒せ!」 担当:遠藤

ここは以前東京R不動産のコラムでも紹介しました。(「東京R事情:力の抜けた感じで気楽に」) 90平米で戸建で10万円を切る物件、と来れば、もう迷わず「何に使う?」と言いたくなります。現在はリノベーションの設計・施工を行う会社さんが入っていますが、使い方が巧いですよね。あえて手を入れ過ぎないで、適度に力の抜けた感じがニクい。
ああいう仕事場の形ってユニークで面白いよね。でも居心地よくてつい仕事しないでゴロゴロしちゃうかも……。あとはなんと言ってもこの風景。昭和情緒というか、船着場越しに見えるこの感じは、日本人なら誰でも持っている原風景のひとつなのではという気がします。2階の窓から外の船着場を眺めてボーッとする感じとかいいですよね。でもこういう安くて雰囲気のある物件がいざ探して見つかるかというと案外ないもんですよね。

この情緒感がたまりません。

「ハウスオブ京都」 担当:吉里

これはもう純粋にスゴイ、の一言。
これくらい維持管理が良い町家が2億くらいの値段で、普通に東京R不動産に載っているところが面白いよね。売れる売れない以前に、まずこういう物件そのものもちゃんと僕らが紹介できたということが嬉しい。日本家屋の物件ストーリーというと「美しき日本様式」を思い出します(書籍『東京R不動産2』にエピソードが載っています)。その本当の良さを見抜いて、古い日本家屋を購入し再生されたお客さんの話。目利きゆえに出会えたという。
でもそれって本当にその良さをわかってくれるひとりの人と巡り会えればそれでいい、不動産という商品の良さでもありますよね。今回は京都でしたけど、東京、たとえば神楽坂などでこういう物件がもし出て来たら本当に事件でしょうね。

新しい物にはない、積み重なった価値。

    

「海岸通カスタムブローカー」 担当:遠藤

こういう建物がポンとあるのが横浜ならでは。東京ではまずありえないですよね。ココには西洋に対する僕らの憧れみたいなものが詰まっている。そしてそれが借りられちゃうんだ!! という。
神戸R不動産もそうですが、外国の文化が早くから日本に根付いてきた土地ならではの物件の魅力ってありますよね。ロケーションとしての気持ちよさがあり、物件のクオリティーもあり、なおかつ賃料は下がる。東京から少し離れてこれだったら、もう思い切って横浜でいいんじゃないか。2011年は、選択肢のひとつとして横浜をリアルに感じた年でもありました。
買い物も便利だし。あとどこへ行っても空が見える。空があって海があって歴史的建築物が残っていて、そういうものを大事にしている街に慣れちゃうと、やっぱりそれがいいと思っちゃうんですね。

海岸通りに建つノスタルジックな建物。

「沸き起こる移住衝動」 担当:タンザワ

建築家・吉村順三が伊豆で手がけた別荘。もう見つけたときから、何だコレは! というただならぬ雰囲気がムンムン。 でも東京R不動産で紹介するまで、半年で1件くらいしか内見のお客さんがいなかったらしいんですよ。東京R不動産に載せた途端、1ヶ月で40件近くも問い合わせが来た。
吉村順三のつくった別荘がこの値段で買えるんだ! という純粋な感動がありますよね。東京でマンションを買うのと同じくらいの価格ですからね。有名建築家の建築を買いたいという人が多いのを改めて感じました。3、4000万出して本当に自分が好きな建築家の物件を買えるんだったら買いたい、という……。
実は端っこの部分だけが後から足された増築部分で、そこだけ吉村順三の作ではないんです。でも決して雰囲気も悪い感じじゃないんですよ。ところがこの物件を購入された方は「オリジナルが一番素晴らしい形だから」と、わざわざお金をかけて増築部分を壊すという。なかなかそうはできないですよね。でも3000万円台で買ってオリジナルの形に戻して、そこに自分が住むというのは確かにそれは贅沢なことですよね。

伊豆で見つけた、吉村順三 作の別荘。

 

「グランドVIEW!!【デカイの付き】」 担当:チバ

都内で10万円くらいの予算、といったときに、こういう物件と出会える余地があるのは、やっぱり夢がありますよね。物件を探すときには環境の良さとかビューの良さとか条件設定あると思いますが、もはやこれはそうした次元を超えている。このバルコニーはもうとにかく規格外の一言。もうひとつ、特筆すべきは窓の多さ。部屋の写真見ただけでもこの物件は絶対気持ちいいなということがわかります。
立地的にはどの駅からも10分以上と、一般的には敬遠されるエリア。でもこの辺に住む方は職場が渋谷だったりするので、自転車があればすぐに行けちゃう、という距離でもあります。建物自体は結構ジャンク。でもこのバルコニーに立った時の気持ちよさは、他では代えられない。学校のグラウンドが見えて、さらにその向こうに緑がずっと広がっているのがヤバいです。

このバルコニーの広さ、規格外です。

   

「物語の続き【女性限定】」 担当:遠藤

実はここ、横浜でも有名なレストランの上なんですよ。元町でもうかなり古くからやっているフレンチレストランで、建物自体もこのあたりのレトロ西洋建築を代表するような存在。だから、物件の内容云々よりまず何よりそのレストランの上に住めるんだ! ということが驚きでした。
元町のメインストリートを一本裏手に入った、昔ながらの建物が並んでいるエリアにあるレストランの上、という立地のステキ感は、なかなかないですよ。しかも女性限定という。そう。これはもう女性一人暮らしマンションというより、お店の2階に間借りする、そんな印象。ちょっと魔女の宅急便的な?
この窓の形とか建物の雰囲気とかもいいですよね。家具が備え付けになっているんですけど、それがアンティーク調なのもまたいいですよね。

こういう窓の形もなかなかない。

「憧れの森に暮らす」 担当:おかざき

一言でこの物件を表現するとなれば、もう“憧れ”しかありません。大倉山駅を降りると山があるんですが、そこの東京ドーム1個分くらいが全部このマンションの敷地。敷地の中でも高低差があるので、高いところにあるマンションもあれば丘の下の棟もある。さらに敷地内には森があってその中は自然庭園みたいになっていて川も流れていたりするのですが、その、森側に向いている部屋だけをずっと狙っていたんです。で、5、6年チェックし続けて、ようやく出たのがこの部屋。
このマンション、Googleマップで上から見るとほんと、環境がすごい。ウォォーッてなりますよね。しかも70年代当時の面影がそのまま残っている部屋。リビングの部分、一段下がっているのがわかりますか? ここに座って沈み込むと、もう窓から森しか見えないんですよ。一段下げることで部屋も広く感じるし、光も入ってくる。
こういうタイプのマンションはむしろ天井は抜かない方がいいと思います。床も無垢じゃなくてカーペット。大人の渋いしっとり感。しかも全部低層の3階建て。外観も本当にかっこいい。文句なしにアツイです。

窓からはモサモサの森。

  

「黒い閃光」 担当:チバ

これはオフィスというよりもはや宇宙戦艦のブリッジみたいですよね。あるいはエヴァンゲリオンのジオフロント? どこか未来感漂ってます。この空間、いったいどうなっているのか、間取りを見てもよくわからないんですが、とにかくひたすらカッコイイ。疾走感がある。何といってもこの直線の強さ。曲線がまったくない。漆黒のモノトーンといい、中途半端感がまったくない。
使いやすいって何? かっこよければいいじゃん、という迎合しない感じがいいですよね。もう全部、男子の憧れでできている、みたいな。
借りてくださったのは広告制作の会社さんですが、オフィスに物理的な広さを求めるというより、むしろ場として面白いことが大事という業種の方に向いている物件でしょうね。

この疾走感、このシャープさ。

    

「平潟湾最前列【パノラマビュー】」 担当:遠藤

東京R不動産の「水辺/緑」アイコンに該当する物件は数あれど、「湾」沿いという物件はこれまでほとんど見たことなかったなと。この2枚目の写真のビジュアルがすごいですよね。部屋からこうした風景が見えるというのは。部屋から釣竿たらせば魚釣れるんじゃない(笑)。この物件は好き嫌いが分かれるかもしれませんが、僕は好きです。この潔さ、孤高に立っている感じがいい。
このように、いろんなシーンを考慮して、選出していったら、結果的に「2011アツかった物件」は横浜が多くなってしまったんですよね。森あり、ワンルームででかいバルコニーあり、水辺あり、レトロあり、そして値段的な魅力もあり……。2011は、横浜の物件に大いに楽しませてもらった年だったという気がします。

平潟湾に向かって立つ。

    

いかがでしたか?
2012年も更にアツい物件をお届けしていくつもりです。よろしくお願いいたします!

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