column
2010.9.7
家を変えよう

一人暮らしリノベーション

宮部浩幸(SPEAC inc.)
 

R不動産のリノベーション・サービス設計者が一人暮らしの自分の部屋をリノベーション。マンション購入からリノベ、入居、そして賃貸までの体験を紹介。

2Kをリノベで一人暮らし用にカスタムした部屋。 設計/SPEAC

マンション購入

いつもならポストの不動産チラシはゴミ箱に直行だが、ある日、900数十万円、いつもより一桁少ない値段のチラシが目に留まった。よく見ると当時住んでいた家のすぐ近くの古いマンション。33.24平米、35歳独身で、ちょっとゆったりとした部屋に住みたいと思っていた僕にはちょうど良さそうな大きさ。なんだかとても気になったので、チラシの不動産屋さんに連絡、内見を申し込んだ。

中は暗くてボロい。が、眺望はいい。

外観から想像した以上に内装は痛んでいた。しかし、これを上回る発見もあった。北側に広めのルーフバルコニーがついている。そこからの眺めはなかなかのもので、数キロ先まで抜けた眺望があり、手前には桜並木の樹冠が並んでいた。

2Kの間取りはそれぞれの部屋が小さすぎて使いづらそう、内装もボロ、だけどリノベすればこういうことはなんとかなる。北向きでもこれだけ空が見えるし、東の窓もあるので明るい部屋ができる。バルコニーや眺望はリノベしても手に入らない。駅から1分という利便性は魅力。あれこれ考えた末、立地や眺望といった変えられない部分のポテンシャルに重きを置いて購入を考えた。

さっそく、値段交渉。思ったより下がらなかったが、もともと安いのだからしょうがない。ローン申請、月々の返済額は住んでいた部屋の家賃よりずっと安い。やっぱりお得だ。不動産屋さんと2回ほど書面のやり取りをしているうちにローンの審査に通った。物件を見てから1ヶ月程で契約、決済と進んでいった。

いざリノベ

左:改修前の平面図。右:改修後の平面図。

料理が好きなのでキッチンとダイニングは優先順位が高かった。ダイニングテーブルはそこで仕事をすることもあり、長さ2mの大きいサイズのものを持っていた。いろいろプランを考えるうちにダイニングが中心にあり、寝床や洗面、玄関、リビングといった他の部分がその廻りにくっつくプランに行き着いた。

さらに眺望とバルコニーを最大限に活かそうと考えた。内装はすべてを取り払った白くプレーンな空間に、寝床になる小上がりを据えた。ダイニングに座った時、寝床に寝転んだ時、眺望が楽しめるようにレイアウト。管理組合にお許しをもらって、バルコニーにウッドデッキのようにスノコを敷く。窓からの光が届きにくい玄関と洗面コーナーの壁は明るい黄色で暗さを払拭した。

改修後、奥が玄関と洗面。左と同じアングルの改修前。

改修後、奥が小上がりとキッチン。改修前は部屋が分かれていた。

いつの間にか増えていた本やCDを効率よく収納する工夫も必要だった。壁面に本棚を作るだけでなく、カーテンボックスの奥行きを少し大きめにして上に文庫本やCDなどの小物を置けるようにした。小上がりの下は台車を仕込んで床下収納にした。

カーテンポックスの上も見せる収納。小上がり下の床下収納、小上がりの奥は押入。

予定外の出費

工事が始まったのが冬、とにかく部屋の中が寒い、外より寒い。解体して分かったのだが、この古いマンション、まったく断熱が無かったのだ。天井の上は上階のルーフバルコニーになっているが、壁だけでなくここも断熱が無かった。結局、部屋内側に断熱材を貼付けてから仕上げることにした。10万円ほど、予定外の出費であった。

解体後、古い仕上の凹凸は味として楽しむことに。水色のが追加した断熱材。

リノベした部屋での生活

予定外のこともあったけど、工事は無事完了。大工さん達の丁寧な仕事で仕上がりはとても綺麗だった。引越をして家具や雑貨をセット。本やCDの背表紙、キッチン道具がお行儀よく並んで見えるのが気持ちよかった。家に愛情を注いだせいか、不思議なもので、ずぼらな僕が毎週、整理整頓、掃除をするようになった。

洗面は引戸で仕切れば脱衣所に。楽しみにしていたサクラ。

しばらくするとバルコニーの先で桜が咲き出した。これは贅沢だ。早速、友達を呼んでホームパーティー。決して大きくはない部屋だけど、多いときには15人ぐらいは集まっていた。普段は寝床の小上がりもこのときは布団を畳んで、縁台になった。 バルコニーにはプランターを並べてちょっとした家庭菜園が完成。トマトにシソ、バジル、パクチー、イタリアンパセリ、意外に簡単に育ってくれて、採れたてを楽しめた。秋には風向きを見て、サンマを焼いてみた。煙がすごい。風を読み誤ると上の人は大迷惑だ。

賃貸へ

人生いろいろあるもので、引っ越して1年半ぐらい経ったころ、結婚を決めた。この部屋は一人暮らし用にカスタムしたので、夫婦で住むのには向いていない。
売ることも考えたが、売ってもリノベ代を含めた値段では売れそうにない。少し考えて、賃貸にすることを決めた。そうと決まれば、R不動産でお客さんを募集。共用部の古さにドン引きされることもあったが、20代の男性が借りてくれた。


自分が住まなくなった場合も考える

リノベ工事費用は予定外出費も含めて440万円だった。自分が住むということでちょっと贅沢しすぎた感もあるが、ローンの返済は賃貸収入で賄えている。買った当時は貸すことは念頭になかったけれど、これを貸すとしたら、売るとしたら、ということを仕事柄考えないわけではなかった。眺望や立地など変えられない項目を重点的に精査したのも、ちょっとコストアップだけれども収納を確保したのも、仕事をするときと同じ判断だった。頭の片隅に自分が住まなくなったときのことを思い描いていたことが結果的にプラスに働いた。

写真中央の建物、駅から徒歩1分。北向きだけど広いバルコニー。

次回もリノベ

短い期間ではあったが、自分の生活にあわせてカスタムした家に住むのはとにかく快適で、充実していた。今はこどもを含めて3人で賃貸生活。また、そう遠くないうちに、リノベで家族のためにカスタムした家に住みたいと思っている。

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