個室はいらない!?
47平米の2DKを、R不動産toolboxのリノベーションパッケージ「BASE01」を使って大きなひと部屋にリノベーション。今のライフスタイルにあわせた間取りにつくりかえて募集を行った事例を紹介。

個室をつくらずに最大限広くリビングを取った空間。引き戸の奥はウォークインクローゼットになっている。( 設計:SPEAC,inc/ R不動産toolbox)
これまでパートナーの方と二人暮らしをしていたオーナーさんが、転勤を機に賃貸に出されることを決意。何年も使わなくなる自宅を遊ばせておくのも、もったいない。とはいえ、現状では借り手がつかない状況なので、思い切ってリノベーションされました。
場所は新宿まで地下鉄で20分弱のところにある。新宿までは1度乗り継ぎが必要で、なおかつ駅から徒歩で10分程度と、立地としてはやや不便性を感じる場所だが、窓からの抜けが非常に良く新宿のビル群が見渡せる。少々不便さはあっても、たとえば自転車やバイクで通勤する人ならそのまま新宿に通えてしまうだろうし、この風景の魅力でマイナス部分は解消できると考えた。
広さの関係からターゲットはカップルの二人暮らし。この広さを望む人たちの中で一番厚い層である。
一方でこの面積では2DKタイプが多く、東京R不動産を見てくださっている方の多くが望まれているような、広いリビングを持つ間取りになっているケースは少ない。このニーズと供給のギャップにこそチャンスがあると思い、リビングをなるべく広く取るプランを提案した。オーナーさんのご要望も
・仕切りとなっている壁はとる
・収納はたっぷりと
ということであった。長年、実際に住まわれてきたからこその間取りの意見には説得力がある。

左:新宿の風景が見渡せるこの眺望。この魅力を最大に引き出せるかどうかが肝心になる。 中・右:改装前。南側は壁で仕切られていたため、部屋の奥まで光が届かなかった。
この建物がつくられた時代は部屋の数が多いことが望まれてきた。だが、今は部屋の数よりも広さを重視する人が多い。部屋が広くなればそれだけ価値になる。一方、限られた面積の中でリビングを広くとるということは、別の部屋を狭くすることになる。そこで寝室について考えた。
まず、南側を2部屋に仕切っていた壁をとる。これはtoolboxの「BASE01」の考え方である。そのことによって2つに分かれていた窓サッシも一体となって、リビングに光を取り入れる大きな開口となる。これで部屋の奥まで光が届くようになる。
一方、寝室をどうつくるか。ここで部屋を最大化するために寝室について考えた。カップルが想定ターゲットだったら、別にベッドを隠す必要は必ずしもないのではないだろうか。来客も年に数回あるかないかくらいが一般的だろう。寝室は寝るだけの場所だから狭くてよい。そう割り切れる人も多い。ベッドを隠すために部屋をつくって個室にするよりも、むしろリビングをなるべく広い状態であることを望む人が多いのではないだろうか。ベッドが見えてしまうことに抵抗をもつ人は意外に少ないのではないだろうか。そう考えて寝室をつくることをやめた。この考えはオーナーさんとも一致している。
ただし、だだっ広いところでは落ち着いて寝られないだろうから、ちょっとした目隠しの壁を用意した。この壁は天井まで届かない壁。そうすることで天井の繋がりを遮ることなく、視線を通すことが出来るため、圧迫感を軽減できる。この壁をベッドサイズぎりぎりに立てることでリビングの広さを確保しつつも「寝る場所」としても閉塞感のない形とした。さらにどうしても仕切りたいという人のことも考慮して、カーテン用のポールを用意した。

toolboxで展開するリノベーションパッケージBASE01。赤線で囲まれた部分がその工事対象。青線の部分は今回行った別途工事。

(左)枕の部分を木の壁で隠すことによって、リビングと寝室をゆるやかに区切る設計にした。(右)リビングと一体感がありつつ、同時にゾーンとしては区切られている。


ダイニングテーブルとソファーがゆったり置ける空間。ちょっとした仕事用のデスクも置けて、明るくなった広い一部屋で活動をひとまとめに行える。
もともとの家のつくりで問題に挙げられていた点には、収納の少なさと洗面が仕切られていないことがあった。収納の少なさに関してはもともとあった押し入れをそのまま使いながら、それを拡張する形でウォークイン・クロゼットにした。リビングを広くと言っても必要な物はしっかりと確保する。これはオーナーさんから出てきたアイデアだった。実際に住んでいたからこそわかることがある。これなら借りてくれる人も収納に困ることなく、なんでもドカドカと詰め込める。
一方、洗面の仕切りについて。オーナーさんはカーテンで仕切っていたので、当初はそのままカーテンで仕切る想定にしていた。しかし、洗濯機スペースがあまりにぎりぎりの大きさだったため、トイレの壁を壊すことで少し大きめの洗濯機でもちゃんと置ける場所をつくろうということになった。トイレと洗面は分かれているに越したことはないが、なるべく間取りを変えず工事費を高くしないためにも一体としよう。海外のホテルでは洗面とトイレが一体となっているのは当たり前の事である。だから受け入れられるのではないだろうか。
リノベーションの場面では、こういった選択がいくつか出てくる。全てをかなえることが出来れば言うことはないが、賃貸という状況ではコストに対する効果がシビアに問われる。そのとき大切なのはオーナーさんの感覚である。既成概念にとらわれ過ぎると借り手の気持ちを見失う。なにがコストパフォーマンスの良い最善の方法なのかを見失う。時には割り切ることも必要になる。ただ、その割り切りが考え抜かれた物であれば、市場はきっと受け入れてくれる。

(左)トイレと洗面の一体化。木の板が実は引き戸になっている。奥に見えているのはクローゼットの扉。(右)既存の押し入れを塗装して活用。ハンガーパイプを増やしてたくさん服が掛けられるよう
完成してオーナーさんからいただいた言葉。
「こんな風になるなら、もっと早くやって自分が住めば良かった」
嬉しい言葉です。けれども、この言葉の裏にはオーナーさん自らがデザインに参加してくれたことが完成度を高めたという事実があります。またオーナーさんは職業柄、カラーコーディネートに詳しいので、寝室の壁に塗る色のセレクトなどにも関わっていただいた。木の色と白の色、それに合う色は何なのか。ベージュ系も合うし、紫系も合う。けれども、賃貸ということを考えた上で好みに走りすぎず、その上で自分が住むなら何色が良いのか。ご用意した色サンプルをじっくり比べながら選んでいただいたのは淡い水色。奥まった壁にさらに奥行き感を出し、主張しすぎることはないが、さりげなく寝る場所を優しく包んでくれる。
床をいくつかご提案したときもそうだった。サンプルをしばらく貸して欲しいと言われ、どの床材が良いか吟味された。選ばれたのは黒めのウォルナット。toolboxで販売している複合フローリングである。
また今回は最終的に、空間のアクセントとして木の扉と壁をつくるプランもご提案することになったのだが、もともとは想定されていなかったので、コストは少し上がることが予想された。にもかかわらず、素材サンプルを見て気に入っていただけたので、全体のバランスの中で取り入れましょうということになった。そのおかげで2枚の木の面が出来上がり、空間を特徴付ける豊かな演出となった。ただの扉であったらここまで部屋の印象は柔らかくならなかった。また、2枚が扉らしくない形状にすることでソファやテーブルの背景としての壁になる。(また後日談であるが、入居されたIさんの家具にも本当によく合っていた)
収益だけが目的のリフォームだったら、こうはならなかっただろう。オーナーさん自らが「自分が住むとしたら」というイメージを強く持って、愛情を込めて空間づくりに取り組んでくださったことで最終的に素晴らしい出来上がりとなった。それはまた借りてくれる人が真に満足してくれる出来とも言えるに違いない。
事実、完成直後に借り手が見つかることとなった。

どこにいても相手の気配を感じていられるような空間の関係性。

(左)あえてゴツゴツした質感を残したテレビ裏の壁。ゴツゴツしていることが壁に表情をつくっている。(右)寝室の壁の水色はオーナーさん自らが選んだ色。ウォルナットの木との相性がよい。

(左)アクセントとなった木の壁と同素材の下足用の棚板。こちらは toolbox突板合板を使用。(右)床材もウォルナットの 複合フローリング(toolbox)。木目の質感がよい。
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