column 2013.2.12
 
田端のテラスハウス・リノベーション

都会の古くて新しい居住について(1)

馬場正尊(東京R不動産/Open A)
 

山手線の田端駅から徒歩10分の丘の上にテラスハウスが残っていた。それをOpenA/東京R不動産のチームでリノベーションすることになった。
この短期集中連載ではテラスハウスの魅力やプロジェクトの進捗を語っていくことにする。早速ですが2月24日(日)、内覧会を行います。

内覧会の受け付けは、締め切らせていただきました。たくさんのご応募をいただき、ありがとうございました。

庭から住戸を見た完成予想パース。(※実物と異なる可能性があります)

テラスハウスを見直そう

テラスハウス、という言葉を知っているだろうか。今、私たちが改めて注目している集合住宅のカタチだ。

テラスハウスとは、複数の戸建て住宅が、壁を共有しながら連続している低層集合住宅のこと。各住戸が地面に接し、庭を持っているのが普通のマンションと大きく違う特徴だ。昭和30年代、初期の団地にはテラスハウスが数多く見られた。有名な阿佐ヶ谷住宅にも2階建てのテラスハウスが並んでいる。

サイトプラン。各住戸が壁を共有し、庭を持っている。

テラスハウスはヨーロッパでは今でも都市部の住まいとしてスタンダードだが、日本ではめっきり見なくなった。理由は、高密度の都市部では土地利用効率が悪いことだろう。でも住む側にとっては、ゆったりと建っているのが利点である。

一方、地方都市は戸建て志向なので、テラスハウスは中途半端に見えたのかもしれない、もしかすると「テラスハウス=長屋」という構図が日本人の頭にあって、リッチな感じがしなかったのも大きかったのではないだろうか? ともかく、日本では残念ながらほとんど見られなくなっている。

南北に開口部があり、風が抜けやすいかたちになっている。

しかし最近、阿佐ヶ谷住宅のよさが注目されているように、テラスハウスには多くの魅力があったことに、僕らは気がつき始めていた。

まず、「庭があること」。 窓を開ければ小さいながら目の前が地面で、畑をつくってみたり、BBQをしてみたり、普通の集合住宅にはない自由がある。

「風通しが圧倒的にいい」。 窓が両面にあるので、それを開けば風が思いっきり通り抜ける。30年前の様式なのでエアコンに頼らない設計におのずとなっている。

「メゾネットであること」。 開放的なダイニングと、プライバシー重視の個室や寝室をフロアで分割できる。そのメリハリは普通のマンションでは得難いだろう。

「適度なコミュニティー感がある」。 庭の気配などが伝わるので、隣近所の気配を感じつつ、適度な距離感がある。

これらは、今だから改めて魅力的に見えてくる特徴ではないだろうか。

リノベーション後の住戸(E-5号室1階部分)。窓の先には庭が広がる。(現在工事中のため、カーテンを閉めて撮影しています)

リノベーション後の住戸(E-5号室2階部分)。

テラスハウスをリノベーション

東京から失われかけていたテラスハススだが、昨年、それが発見された。

駒込駅・田端駅から徒歩10分。JRがかつて社宅として使っていた物件。築39年で、いい感じに味が出ている。

湘南新宿ラインのトンネルの上に建っていたために、積載荷重に制限がある土地で大きな建物が建てられず、そのまま残っていた。往年の典型的なテラスハウスだ。

ビフォーの写真。小ぶりでかわいらしい建物と庭。やはり、各住戸に庭があるのは魅力的。

今回、全部で8棟残ってたうちの4棟をOpen A/東京R不動産チームでリノベーションすることになった。最初に難点を言っておくと、トンネルの上に建っているので地面の下から電車が通るガタゴトという音がかすかに聞こえてくる。日常生活では気にならないと思うが、音に神経質な人はダメかもしれない。

まあ、もしトンネルの上でなかったら、とっくに取り壊されていただろう。

公園ビフォーの写真。

公園から線路を見るとこんな感じ。

電車の見える丘公園

このテラスハウスは立地がいい。
関東平野の丘陵の上に建っている。ゆったりした敷地の端っこがちょっとした公園になっていて、そこからはスコーンと抜けた平地を見渡せる。眼下には、新幹線、京浜東北線などが一望。マニアでなくても眺めていたくなる風景だ。

「電車の見える丘公園」と、僕らは勝手に名付けている。パクリだが、そう呼ぶ以外にふさわしい名前がない景色なのだ。ぼんやり散歩をしながら、この公園からトレイン・スポッティングするのが、この物件の隠れた贅沢かもしれない。

工事途中だけど、内覧会を開催

このテラスハウス、現在、工事中だが、事前に内覧会と説明会を行うことになった。構造補強や断熱性能のアップ、設備面の充実、ライフスタイルにあわせた複数のモデルがあるので、その解説など、リノベーションの全容についての解説などを行う予定。

土間のあるプラン、オープンダイニングのプラン、アイランド型キッチンのプランなど、テラスハウスの空間的な可能性を活かした間取りを用意している。

入居希望者、テラスハウスという居住形式の魅力や可能性について興味のある人、電車好き? など、お待ちしています。当日は、Open Aと東京R不動産のスタッフがいます。住まい方や、デザインやコンセプトについての説明も行います。

(つづく)

※連載の第2回は、リノベーションのプラン詳細についてお送りする予定です。

内覧会の詳細
内覧会の受け付けは、締め切らせていただきました。たくさんのご応募をいただき、ありがとうございました。

日時:2013年2月24日(日) 10:00 ~ 17:00
会場:駒込ガーデンテラス E-5号室、F-5号室、G-5号室

※当日は10:00~、13:00~、15:00~の3回、Open Aと東京R不動産のスタッフから住まい方や、デザインやコンセプトについての説明も行います。ご来場希望の方は、ご希望のお時間をご記入ください。折り返し担当者からご連絡を差し上げます。

公式サイト:駒込ガーデンテラス:ジェイアール東日本都市開発 WEBサイト

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