2009.2.24 |
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ネオ・コーテックス社オフィス
大井町にある「ネオ・コーテックス」のオフィスを見学させてもらってきた。
ネオ・コーテックス社は恒陽社という印刷会社の広告、デザイン部門から2004年の6月に独立した新会社だ。恒陽社というと出版・デザイン関係の仕事をされている方なら聞き覚えがあるかもしれない。古くからMacのDTPと関わってきた会社であり、またレイアウトソフト「QuarkXpress」の国内代理店としても知られている。
元印刷工場をコンバージョンして使っているネオ・コーテックス社のオフィス(品川区・大井町)。
こちらのオフィスは昨年の3月まで印刷工場として使っていた場所。工場が湘南に移転したのを機に空家になっていたのを、ネオ・コーテックス社の社員さんたちが自分たちで改装プランを立て、わずか3カ月の間に現在のような姿に変えてしまった。
まさに印刷工場。
ケーブル類は天井から這わせて経済的に。
「会社設立まで時間がなく、また予算も限られていたけれども、そこはもともとクリエイティブのチームだったので知恵のみで乗り切りました」(同社・チーフオペレーティングオフィサー、松崎勉氏)
印刷機が置いてあった場所だけに改装前の状態は、50年分のインクがコンクリまで滲みこんでいて相当の汚れぶりだった。しかし現在はこの有様。海外のオフィス雑誌ならありそうなワークプレイス。天高もこれだけの高さがあるというのは、印刷工場跡こそだ。躯体のがっしりとした感じも良い。
改装にかけた費用は3000万。総面積が150坪ということなので坪当たりにすると20万の計算になる。普通の見積もりなら最低でも坪70万から100万くらいはかかるところである。そのわずか1/5。確かにリーズナブル。しかもこの費用合計、家具まで含んだ額という。家具もすべて自作。デザインは社員の方たちが行い、工務店に発注した。椅子は新古品をたまたまネットで見つけてきた。
またユニークなのは天井の部材で、一面綺麗な銀色に輝いているが、実はこれは印刷工場の廃品をかしこくリサイクルしたものだ。印刷をするときには必ず刷版といって版を焼き付けたアルミ板を使う。これは通常1回使うとゴミになってしまうのだが、この捨て置かれた状態だった膨大な数の刷版の板(数にして400枚)を天井板として貼った。すべてタダ。そして見た目にはわからないけれど、この板の裏面には、印刷の版がそのままに残っている。
改装前。かなりボロボロ。50年分のインク汚れが蓄積されている。
このように生まれ変わった。上手に素材のリサイクルを行って賢く改装した。
「どこかにこの場所のDNAを残したかった」と松崎氏。このオフィスにはこうして見えないところでこの建物の歴史が生き続けている。
それから印刷機がもと置かれていた場所は床が掘られて凹みになっていたらしいが、それもあえてコンクリで埋めることをせず、土を入れそこに緑を植えてオフィスにグリーンを巧みに採り入れていた。こちらもなかなか賢い。
床はレベリング(地塗り剤)を行った後シートを貼った。通常ならOAフロアにする施工費だけでも600、700万かかる。その分ケーブルは下に這わせることができないが、それは上から吊るす仕様で工夫している。
節約上手、それでいてもとの印刷工場が持っていたニュアンスも上手に残している点がとても印象的だった。
それにしても150坪のオフィスって広ッ!
ネオ・コーテックス社
2004年6月30日設立。親会社はQuarkXPressのXTentionやInDesign/QuarkXPress対応の面付け、製版ソフトを販売している会社としても知られる印刷会社の恒陽社。職域は広告、エディトリアル、Webデザイン、ネットワークコミュニケーション、デジタルフォトスタジオ、システム構築、画像データベースのソフト開発など幅広い。また空間プロデュースなども手がけ、今回のオフィスは自社における空間仕事のショールーム的な役割も果たしている。