2020.7.17 |
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見えない災害の時代の考現学
新型コロナウイルス感染拡大を機に、これからのまち・住宅・オフィスのあり方を考えるゼミを、近畿大学の宮部浩幸研究室、東北芸術工科大学の馬場正尊研究室が共同で立ち上げました。そこで出た学生のアイデアとグラフィックをグループサイト「REWORK」と「公共R不動産」とともに展開します。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い緊急事態宣言が出され、皆がステイホームな日々を過ごしている頃、SPEACの宮部浩幸が、これからの街・住宅・オフィスのあり方についてfacebookに投稿したのをきっかけに、近畿大学の宮部浩幸研究室、東北芸術工科大学の馬場正尊研究室、Open Aで共同のオンラインゼミが立ち上がった。
ちょっと前まで、東京と大阪と山形の大学で共同ゼミをやろうとしたら、かなり大げさな準備と時間、そして移動コストが必要だっただろう。しかし、今回はこの企画が持ち上がって3日後には、「試しにやってみようか」ということでオンラインのアカウントが設定され、学生とOpen Aスタッフに共有された。
三つの都市をつなぐのは簡単だった。いや実際には、京都や仙台に住んでいる学生も含め、20カ所以上を同時につないだゼミだったわけだが。
社会人と大学生、関西と東北、それらがあっという間にシャッフルされてフラットになる。なんだか学ぶことや働くことの枠組みが一気に変わってしまったのかもしれないと感じた瞬間だった。
方言が飛び交うディスカッション、都会と地方では発想も違う。たとえば大阪の学生は都市のスキマを見つけて、そこを小さな居場所にすることを思いつく。山形の学生は自然の中に飛び出していくようなワークスペースを提案する。暮らし環境が違えば、おのずと想像する風景も違うのだ。そのギャップもおもしろかった。
大学の授業のようなことをちょっとだけ述べておくと、R不動産の着想のベースには今 和次郎の「考現学」という学問がある。
それは1923年に起きた関東大震災の後、当時、早稲田大学建築学科教授だった今 和次郎が、破壊された都市からいろんな材料を拾ってきて、仮の住み家や店を工作的に組み立ててゆく人々の想像力に感動し、それを記録したことに始まる。
その描写やスケッチはとてもユーモラスで、大変な状況の中でも、人々は新たな生活に向けて空間をつくっていけることを伝えている。いや、その状況下だからこそ、今までにない工夫やデザインが生まれるのかもしれない。R不動産は物件を考現学的な視点で語った不動産仲介サイトだ。
それから100年。今回の災害は物理的に都市を破壊するものではなく、目に見えないところで静かにやってくるものだった。ステルス性の高いこの災害は、ある意味で現在を象徴しているようにも思える。そんな中でも人々はその状況を克服すべく、いや、もしかすると楽しさやユーモアに変換しながら、やはり新たな空間を創造しようとする。この共同ゼミは、見えない災害の時代の考現学であるのかもしれない。
この共同研究の中で出された学生たちのアイデアとグラフィックをグループサイト「REWORK」(オフィス)、「公共R不動産」(街)でも展開する。
NewNormal コロナ後のまちと住宅とオフィス(住宅編) - 東京R不動産
NewNormal コロナ後のまちと住宅とオフィス(オフィス編)|REWORK
NewNormal コロナ後の街・住宅・オフィス(街編)|公共R不動産
この話を全国のR不動産のみんなに話してみたら、環境は違えど色々とポジティブな意見をもらった。引き続きそれぞれのエリア・環境での「NewNormal」の提案ができそうなので乞うご期待。