2009.2.24 |
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島津山ハウス
五反田にあるレトロな外国人用住宅が、シェア型ワークスペースに変貌。
ダイニングキッチンを広々ミーティングスペースに。ベッドルームを個室のブースとした。こもって集中することもできて、なおかつゆるやかな人とのつながりも生まれる。
ここ「島津山ハウス」は築35年の物件。もともと外国人用住宅であった。現オーナーが買い取った後、自社のオフィスとして使用していたが、拠点を移すことになったため賃貸物件とすることに。しかし五反田は高級住宅が立ち並ぶ一帯、住宅としてそのままではやや見劣りがするし、事務所利用といっても都心で周りに事務所物件が沢山ある中で、いまひとつアピールしづらい物件だった。
それならいっそ、「古くて広い住宅」を「レトロ感漂うスモールオフィスの集合体」と見立てて、リノベーションを行ってはどうか? もともと広くとられていたダイニングキッチンの空間は、共有のミーティングスペースに。外人住宅ならではの、ホテルのように各階ごとで数室づつつくられていたベッドルームは、個室の作業ブースと想定してみたのだ。
フリーランサーやベンチャー系の小規模事務所が求める仕事場の条件――それほど広さは求めないが集中できる個室&シェアで全然かまわないが、ゆったりとして広いラウンジ――を叶えるうえで都合の良いつくりをこの住宅は予めポテンシャルとして備えていたと言えよう。
結果から言うと、ローコストのリノベーションで大きな成果を挙げることになった。若干の間取り変更、天井を上げるなど手を加えたが、基本的には元々の建物の雰囲気をなるべく活かした。だが今この「島津山ハウス」は3フロアに、デザイナー、編集者、CM制作のクリエイターなどクリエイターの事務所や、アロマテラピー、カイロプラクティクなど個室型サロンが次々に入り、新たな活気が生まれている。
加えて、住人のほとんどが東京R不動産を通じての入居であるため、職種業種はまちまち、しかし価値観が自然と近い人たちが集まっているのもここの良さ。「長屋的なつくり」のこのシェアオフィスが、快適でありえているもう一つの理由。そしてそれはオーナーにとっても良質なテナントを集めるというメリットにもつながっている。
もとからの木調の内装に、現代風のポップな壁紙をあわせて、独自の雰囲気をつくりだしているラウンジ。
仕事場だけど、ちょっと自分の家のような居心地の良さがある。
普段気を遣いすぎる関係でもなく、かといって知らぬ間柄でもない。たまに入居者みんなで屋上BBQをしたりもします。
レンガづくりの外観、室内にあがれば木の温かみが感じられる空間。少しクラシックなホテルを思わせる風情すら漂う。もともと住宅だったので当然といえば当然だが、家っぽい雰囲気に安堵感も覚える。しかし、その一方で、ラウンジや共用部の階段はキッチュな壁紙で包まれている(アーティスト野老朝雄氏の作品)。レトロとポップがかけあわされた、この違和感が独特なタッチをこの建物にもたらしている。
さらにもう一つ、最大の魅力とも言えるのが、屋上のデッキ。広い・ビューが良い・島津山の街並みが一望できる。入居者はいつでも上がれて、ちょっと息抜き。考え事。打ち合わせ。あるいは、打ち合わせを済ませた後の仲間との(お客さんとも?)屋上ビール、などと多目的空間化。パーティーをしても良い。BBQパーティーも行ってOKです。
…と、ここで、島津山ハウス現入居者の方々に、施設についてコメントをいただきましたので、ご紹介します。
・屋上がとにかく気持ち良い。屋上を見て決めたと言ってもよいくらい。
・壁の木の感じが気に入った。玄関から入ったところの木の格子もすごく好き
・普通に事務所物件を借りると最初広いと思っても、給湯所とかスペースを取られて意外と使い勝手がよくなかったりする。ここは逆。一見狭く感じても完全に分かれているので作業しやすい。気分転換など、メリハリもつけやすい。
・自分の部屋のようにこもって集中もできる。しかし同時に「しん」とし過ぎていないのがよい。いろんな人がいて刺激も得られる。
・サロンなので、自分がいて居心地のよいところじゃないとお客さんもリラックスできない。ここはそういう意味で贅沢な空間。
ちなみに、今入居されているテナントさんたちはこんな方々です。(順不同)
東京ピストル(編集プロダクション)
maroon(アロマテラピーサロン)
dock-ai(指圧&リンパドレナージュ)
peace of mind (美容矯正サロン)
ソライロ(映像製作)
アルタビスタ(モバイル用英会話コンテンツ制作)
その他、カイロプラティックやマッサージ、CGディレクターなど
閑静な住宅街に立つ、レンガづくりの外観の島津山ハウス。
ここ、ロケーション的にもポテンシャルが高い。
五反田と聞くと一見賑やかな気がするが、この島津山ハウスのあたりはとても閑静。JR山手線五反田駅から八つ山通りを歩いて8分、横道を入ったところにあるが、大通りからそれたとたん、喧騒が見事に消える。
由緒ある高級住宅街で、外国人も多いエリア。古くは、島津家の屋敷があったところで、地名はそこに由来している。この島津山ほか、隣接する池田家の屋敷跡「池田山」、徳川の別邸があった「御殿山」「花房山」「八つ山」をあわせて、この地域は「城南五山」と呼び習わされたそうだ。いうなれば江戸時代からの高級住宅街エリア。だから緑の多さなどもふくめ、環境が良い。
そしてもちろん交通のアクセスの良さは言うまでもない。品川から出張にもすぐ行ける。
それから、フランス料理の「ヌキテパ」やハンバーガーショップの「フランクリンアベニュー」が近所だったりするのも嬉しい。ぶらり原美術館に散歩で行けちゃったりもする。
photo=平野 愛、平賀哲、ほか