2009.2.24 |
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REN-BASE UK01
オープンスタジオNOPEなどを手がける建築家集団、テレデザインが空間デザインを担当。グラフィックはアジールデザインの佐藤直樹さんが手がけた。
神田の「REN-BASE UK01」に行ってきた。
ここは2003年11月に行われたTokyo Designers Block Central East(TDB-CE)でも大活躍をした場所。会期中にはオープニングパーティーの場所となり、シンポジウムの会場となり、はたまたボランティア大学生たちのたまり場ともなり……。まさに「基地」のような存在だった。実は僕もこのイベントのスタッフとして、ミーティングには随分ここを活用させて頂いた。
もともと、編集者やデザイナーなどクリエイティブ系の人たちがワークシェアできる空間というコンセプトでつくられた空間だけにそれは当然の成り行きだったとも言える。この場所は2003年10月に“コラボレーション”をテーマにしたレンタル&シェアオフィスとしてオープンした。ビルのワンフロアまるごとを使い、オープンなラウンジ、専用デスク、パーテーションで区切ったブースから空間がなっている。ラウンジは共用スペースとして打ち合わせなどに使うことができ、仕事は席貸し、あるいはブース貸しといった契約の種類によって間借りができる。
元々は蓄音機メーカーの本社屋として建てられたビルで築46年になる。その2階部分 がもう随分長いこと空室となっていた。そこをいったんスケルトンの状態に戻し、コンバージョンしてつくったのが今のREN-BASE UK01である。
ここができた経緯について、運営をしている(株)アフタヌーンソサエティ(代表取締役・清水義次氏)の橘昌邦さんに聞いた。
「実は千代田区の一番の産業というのは不動産業なんです。しかし今切実な問題になってきているのが空室の問題。中規模ビルは特に空室率が上昇しています。こうした状況のもとに、千代田区では“SOHOまちづくり構想”という提言がなされまして、民間所有のビルの空室を有効活用していこうという動きが生まれています。ここはそうした展開の核になっていく場所としてつくられたスペースです」
このエリアに散在する中小ビルの空室を地域との連携によりネットワーク化し、共同利用する。また、それぞれの空室・空きオフィスはその物件特性に合わせてSOHO、住居、店舗などにコンバージョンしていく。「REN-BASE UK01」とは、SOHOまちづくり構想から派生した「神田RENプロジェクト」がもとになっているが、RENは“連”、連なるから来ている。BASEというのは、将来、いくつもつくられるSATELITEの拠点であることを意味している。UK01とは内神田でつくられた第一号という意味だ。
コンバージョンを使ったまちづくり。それを域内のビルオーナーたちを巻き込んで行っていくという。最近ではこのプロジェクトを支援するファンドも整備が進んでいるとのことだ。
(左)以前はこんな風だったが… (中)今ではこんな空間 (右)RENの「家守」、アフタヌーンソサエティの橘さん。
ファンドは、日本政策投資銀行が中心となって設立する本格的なものだという。同銀行内には既に「SOHOコンバージョン支援室」という部署までできている。
ビルオーナーたちは持ちビルのコンバージョンをしようと思っても財政的に厳しいのが現状。しかもコンバージョンには担保価値がつかないので、銀行からお金を借りるのも困難ときている。そこでつくられたのが今回のファンドの仕組みである。地域単位でビルの空室をまとめて管理運営し、コンバージョン、店子集め、企業支援などトータルにインキュベーション事業を行っていく。最終的にビルの価値が上がったら、そこから金利を出資者たちにバックする。
ユニークなのはメインとなる出資者が当の空室に悩むビルオーナーたち自身である点である。自分だけではビルの改装費を出すのがつらい。けれども、この仕組みの中では自分の持ちビルもリノベーションできて、なおかつ地域全体としてのポテンシャルアップにも参画できる。このファンドが順調に行ったなら、手元には生き返った自分の持ちビルから入る家賃収入と、更にファンドからの金利が入ってくることになる。
世の中にはうまいことを考える人がいるものだなあ……。このアイデアは空家再生であると同時に、地域の活性化でもあるわけだ。
そして、橘さんによればネットワーク化された空室を管理運営していくにあたっては、江戸時代に存在していた「家守(やもり)」の仕組みを復活させるのだと言う。家守って何?
「かつては家主(=ビルオーナー)と店子(=テナント)の間には、家守と呼ばれるマネージャー的存在の人がいたんですよ。その人たちが借家の運営管理をオーナーとは別に行っていた。そこで現代版の家守を行おうと思いました。家守はオーナーの代わりに空室の改修やテナント集め、日々の運営などを行っていく集団。家守には、このネットワーク全体を管理するタイプの人もいれば、個々の物件の運営を任される人もいて、いわば大家守もいれば小家守もいる。ですからいろんな専門家がそこには入ってきますが、その連帯を通してこの仕組みを支えていこうという考えです」
そして、この家守たちがサポートしてくれる環境の下、個々の物件ではさまざまな店子、RENで言えばクリエイターや個人事業主が場を得るというわけか。なるほど、段段わかってきた。
「フリーランスやクリエイターの方たちに集まって頂きたいと思ったのは、この神田では非常にポテンシャルのある地場産業がいくつもあって、そこと結びついて“コラボレーション”が生まれてくれたらという気持ちがあるからです。ここには出版・印刷系もあれば、繊維関係も集まっているし、秋葉原といったIT街もある」
そういえば、TDB-CEも「オーナー・ミーツ・アーチスト」というコンセプトを持っていたが、イベント後、地元の企業と参加アーティストが共同でデザインプロジェクトを立ち上げたという話を聞いた。こうしたことがもっと起こっていくとしたら、確かにこれは面白い動きだ。
それにしても、僕って家守になれるかなあ……。ライターじゃやっぱ駄目かなあ、ねえ橘さん?!
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