第10話 昼酒カルチャー

外で昼酒。
「昼酒」という言葉、知っているだろうか?
文字から推測できるように、「昼間から酒を飲む」というそのままの意味だ。
競馬中継を見ながら酒を飲みたいから始まったからとか、いつどうやって始まったかは定かではないが、聞いただけでうらやましくもなり、堕落しているようにも思える。
そんな「昼酒」が、浅草では当たり前の光景のようになっている。もはやこれは、「昼酒カルチャー」。
一見、すごく人間がだめになりそうな印象があるが、実際はそうではない。どこか、人生をあきらめるのではなく、ポジティブに考えて楽しく生きていく文化なのだ。
今回はその「昼酒カルチャー」というディープな浅草文化のご紹介。

浅草寺のすぐ近くの「公園本通り」
浅草には、人呼んで「浅草ホッピー通り」というところがある。
ここはホントに「昼酒カルチャー」がすごい場所。競馬開催の週末は朝9時から開店する酒場もあるほどの、地元の人や観光客が昼間から酒を飲んでいる街だ。
おいしそうな煮込みのいい匂いは、「禁断の香り」。人々を誘惑する匂いが漂うこの街は、「禁断の園」のようだ。
気がついたら僕は、道路にはみ出した丸イスに座って、生ビールをぐびぐびしてた。
誰が決めた訳ではないが、どことなくしちゃいけないように見える「昼酒」。別にいいじゃないか。一杯くらいなら。
仕事終わりの一杯もいいけど、太陽がギラギラと照っている中、キンキンに冷えたビールを飲むのは痛快感が全然違う「昼から飲んじゃったよ、おれぇ」な感じで、自然と顔がにやにやしちゃう。

いろんな人がいる街。裸で歩くおじいちゃんもいたり……。
ビールを飲みながら街を見渡すと、ここは「変に飾らない街なんだ」とわかる。
店のおばちゃんが業者に仕入れの電話をしながらビールをテーブルにドンっと置いたり、上半身裸のおじいちゃんが街をのろのろと歩いていたり、焼き魚定食とホッピーをたしなむ、「昼酒プロ」のようなおじさんもいる。
この街は、他の街のように「ここではこう話さなくちゃ」、「こういう格好をしなくちゃ」という「暗黙の了解」がない街なのだ。
ビールを飲みながら、飾らなく、自由な街の風景を眺めているだけで、人生に勇気が持てた。生きてりゃ色々あるし、つらい事なんてしょっちゅうです。不況で社会も信頼を失っている世の中だが、この街では「いいじゃん」とか「大丈夫」というテキトーな言葉が、妙に説得力がある。
人生に悩みがある人や、最近気を張ってばかりの人、いっぺんここに来て「昼酒」してみるといいかも。ほんとに、僕もちょっと「明日」が見えたから。

どうも昼酒はニヤニヤする。小さい頃のいたずらみたいな感覚だ。
昼にさくっと一杯飲んで、すぐに仕事もいいと思う。
さて「昼酒カルチャー」は、この街に根付いた文化で、「たまにやるのがいいのかも」と思ってしまう「非日常の世界」なのかも知れない。でも僕は、もっと仕事中の人が一杯ひっかけて仕事に戻っていくような「日常の世界」になっていいと思う。
仕事と酒。あんまり一緒にしちゃマズいかもしれないけど、様々な生き方があるように、色んな働き方があってもいいじゃないか。
昼酒をした後は仕事が何倍も楽しくなりそうだし、打ち合わせが昼酒だったら話が弾むかもしれない。知り合った隣の人から仕事をもらえるかもしれない。
人生を楽しむように、仕事も楽しみましょうよ。
もしかしたら、次世代型の働き方までもつくり出す力を秘めているかもしれない「昼酒カルチャー」。この街はそれを許容してくれる。
さあ皆さん、試しに浅草で「昼酒」してみては?

浅草エリアの時代がやってくるのではないか?!それが私たちの仮説です。日本橋エリアを見つけた時の感覚と同じものを、東京のさらに東側の浅草エリアに感じました。昭和の懐かしさと近未来が混在したシュールな風景がおもしろいこの街で、物件を探し始めます。
浅草を探索する理由とは?
馬場正尊による関連コラム
「気になっている浅草エリアを、自転車ツアーで探索してみる。」

三箇山、松尾、伊藤、黒田(山形R 不動産リミテッド)
東京R 不動産の東チームとして日本橋エリアの物件を開拓するメンバーと、1 ヵ月の限定の特別参加の山形R 不動産リミテッドからの学生インターン。