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2008.12.30

 
08|“デザイナーズ”の行方
林 厚見(東京R不動産/SPEAC inc.)
 
カッコいい物件は価値が高い?

デザインのカッコいい不動産は人気が出てすぐ空室待ちになるの?家賃も高くなるの?将来性も高いの?…これは賃貸不動産を建てる施主の立場からすればやっぱり気になるテーマだと思います。もちろんここでいう価値とは建築の芸術的価値ではなくて経済価値・資産価値の話です。何が"カッコいい"かの議論はラチがあかないのでとりあえず「いい感じにデザインされている」ものということにしてお話しましょう。

一言で言うならば、場合によります。「いい」と「いい感じ」の回で書いたように"カッコいい"物件には「いい感じ」なだけの物件もあれば「本当にいい」物件もあるということです。相場を超越した高い価値が生まれることは確かにあります。ただしそれが生まれるのは、物件のつくりが立地やニーズに合っていて、顧客に求められるツボがおさえられ、クオリティを持っているときであって、単に有名建築家だからとかスタイリッシュだからというだけだとむしろフツーの物件にすら"負ける"可能性も高いことに注意する必要があります。

デザインプレミアム

事業者としては、"クリエイティビティがセオリーを超える"ことを狙うのが一番おもしろいのは言うまでもありません。そしてそれは往々にして可能であり、僕らは物件をつくったりイジったりするとき、常にそれを追求します。ただ、奇跡のようなマジックはいつでも簡単には起こるわけではありません。本当にダメダメな立地やボロダメ物件の改装であれば大きな逆転シナリオが立てやすいですが、便利な立地での一人暮らしの新築住宅では、"デザイン"で上げられる付加価値は、頑張っても10~15%までと思って計画すべきでしょう。誰が見ても悪くない立地と敷地の場合、限られた一部の人に向けた"嗜好品"よりも"質の高いスタンダード"を追求するスタンスが大抵はうまくいくものです。そして嗜好品は増えすぎるとやがて余ります。だから「この場所はひたすら安く、ひたすら万人に受け入れられるものをつくる方が事業性は上がります」という場所も、残念ながら結構あるんです。

また、10万円の予算で探していた人が「素敵だから12万円で借りちゃった!」ということはあまりありません。12万円で入ってくれる人は【別の人】なのです。その【別の人】が求める場所、広さ、仕様、そしてその人たちの競合(代替)物件のことも押さえていないと外してしまいます。欲のかきすぎは失敗のもとになります。それと意外に誤解されがちなのですが、デザイナーズなどと言われるものに割高な家賃を払って住むのはデザイナーではありません(以前は割とそうだったんですが)。デザイナーは、あえて高い家賃を払って人がデザインしたものにそれほど住みたがりません。むしろもっと普通の人が「あら素敵♪こんなのあまり見たことないわ」と言って借りることの方が多いのです。だから、デザイナー物件にこそフツーの人の生活を支える機能や環境が絶対的に必要なのです。
このようなことを冷静に理解し配慮つつ、同時に人の心をガツンと動かす空間をつくるのが本当のプロということです。

デザイナーズ物件

デザイナーズという言葉は今でもたくさん使われています。最近では「打ち放し"風"壁紙のデザイナーズ物件!」といった倒れそうなフレーズまで登場しています。まあ所詮はプロモーション用語だと思えばよいのでしょうが、その共通イメージがかなり広く認識されているために、東京R不動産でも悩んだ末にこのビミョウな言葉をあえて検索アイコンに使っています。かつて80年代頃にはデザイナーズブランドとか、90年代頃にはデザイナーズレストランとか、そしてその後はデザイナーズマンションといった具合に、衣食住が見事に悩ましいフレーズを引き継いできました。服や飲食店は今はだいぶ個々の本質価値やコストパフォーマンスがより意味を持つようになっているようですが、住宅においてはもうちょいというところでしょうか。すべての建物・物件は本来的な意味で「デザイン」されているべきだと考えれば、この言葉が自然に消えること、そしてR不動産からデザイナーズアイコンが消えるべき時を僕らは待っているわけですが、そろそろその日は近づいてきたと思っています。

恐らく10年後、きちんとデザインされた「いい物件」が価値を上げる一方で、ここ数年につくられたおしゃれ物件の4割くらいはキビしいことになっているでしょう。トレンドの過剰というのは罪なもので、旬が過ぎて犠牲になったモノたちとそれによるロスは悲しいものです。服なら数万かせいぜい数十万、店なら数百万かせいぜい数千万、でも建物は…と、2桁ずつ上がっていくのですから恐ろしいものです。

オーナーさんへ

狙いの方向性が"嗜好品"であれ"スタンダード"であれ、基本を押さえつつ、使う側の立場に立って新しいアイディアを形にすることこそ、最後に皆をハッピーにします。

「デザイナーズなんていいかな、って思ってるんですけどね」というオーナーさん。
なぜ「いい」と思っているのでしょうか?

とりあえず人気がありそうだから?流行ってるみたいだから?
なんかカッコいいから?「差別化」が必要だから?

だとすると要注意です。いかに才能ある建築家が設計しても、その場所のニーズの捉え方に対する理解と経験値のある人が関わらないと厳しいことになる可能性があります(ぜひウチにも一声かけてください☆)。

他が真似できない魅力、普遍性のある価値が生まれることを期待したいから。
場所のハンディを克服するために、この場所ならではのコンセプトにフォーカスすべきだと思うから。
これからのスタンダードになるものをきちんとデザインできる人を知っているから。

…そういうことであるならば、やり方を間違えない限りよい結果が生まれると思います。

このブログについて
 

世の中にもっと魅力的な物件を増やしたい。不動産を持つ人・つくる人が、住む人・使う人と一緒に幸せになるにはどうしたらいいだろう?そんなことを考えつつ、感性とアイディアにあふれるお客さまたちから日々ヒントを得ながら不動産事業や投資・経済のことを考えてみる。

「東京R不動産」を共同運営する不動産企画会社SPEACのメンバーがおくる、心あるオーナーさんのための、ビジネス目線のコラムシリーズ。


著者紹介
 

林 厚見(東京R不動産/SPEAC inc.)

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