2008.8.15

 

オフィスにおける床と天井の存在感

馬場正尊(東京R不動産/Open A)
 

まずは、この物件の改装前の写真。
どこにでもあるオフィス。日本のオフィス空間の90%以上はこんな感じだろう。微妙な色のタイルカーペットに、ボード張りの天井、ダウンライト、以上。見慣れた風景だ。しかし……。

本当にこんな空間で仕事をしていいのか!?
こんなオフィスでは気持ちも沈んでいってしまう。
そこで、ちょっとだけ変えてみました。主に床と天井。

上の写真と同じ空間。
床をフローリングにし、天井を抜いてみただけ。
照明は使い手が自由に位置や機器を変えることができるようにライティングダクトを通している。それだけでもこんなに違うのだ。

今までの一般的なオフィスは、汚れが目立たない、メンテナンスが楽、といった理由からグレーやブルーのカーペットで画一化されてきた。しかし重要なのは、その空間のなかでワーカーが高いパフォーマンスを発揮することこそ、求められるべきだ。僕らは床を汚さないために働いているわけではないのだから。

とくに床面は人間の心理に与えるインパクトが大きい。圧倒的に面積があるので目に入ってくる比率も高いし、人間の足の裏は想像以上に敏感で、靴を履いていても素材感を感じ取ったりしている。その小さな蓄積は、いつのまにか大きな影響となって人間に跳ね返ってきている。

今までオフィスの床には選択肢が少なかった。
配線の都合でフリーアクセスにしなければならない場合、床は自動的にタイルカーペットになってしまう。このプロジェクトでは、フリーアクセスの機能を保ったままでフローリングを採用してみた。空間全体が柔らかな雰囲気に変わったのがよくわかる。

もうひとつ重要なのが天井。
特に窓面が少ないオフィスの場合(このプロジェクトは窓が多いが)、天井に起伏がなくペターッとしていれば、さらに圧迫感が増幅される。その抑えられるような天井の存在が、オフィスを窮屈にしている要因のひとつ。

均質な照度と空調効率のために、こんな天井が一般化しているのだが、オフィスの中に多少明るさにムラがあってもいいではないか。このプロジェクトでは傘のついた照明でベースの明るさを確保し、あとは使い手が首を振る照明で自由に明るい場所を設定できる。

オフィスも自分の家のように、適度にカスタマイズできるほうがいいはずだ。

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東京R不動産では、物件を仲介するのと同時に、ビルオーナーさんや企業と一緒に企画や設計を行っています。東京R不動産を共同運営しているOpen A が現在、設計中の物件についてレポート。
テーマは「Office as Livingroom」。


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