🗽みんデベのファイナンス 〜アメリカの場合

みんデベのファイナンスの2本目。いきなり海外ネタかよ! といわれそうなんですがご容赦ください。みんデベが”小さなまちづくり”から飛躍するときのカギになるのがファイナンス感覚であり、そのイメージを持つにはこれが話が早いんです。

こっちの記事(『「デベ=会社」ではない、という話』)で、アメリカのデベロッパーは会社のことでなく、個人のことを指す場合が多いという話をしました。

そして個人としてのデベロッパーは、どこかの会社に勤めてるというよりも、一匹狼なプロデューサーのようなイメージだったりします。せいぜい数人の会社で、「Tom & associates, LLP」みたいな感じで、大きな株式会社のイメージではないんですよね。ここでTomはプロジェクトを企てて完遂する「プロデューサー」です。「この土地でこんなことやろう」「この建物買って、こうしよう」というチャンスと見つけて、作戦=企画を立てる人であり、お金を「集める」人なんです。

ニューヨークなんかにはそういう人たちがたくさんいて、人によって商業施設に強かったり、オフィスビルに強かったり、はたまた低所得者向け住宅を専門にしているデベロッパーなんかもいたりします。そんな彼らのファイナンスの具体的なイメージを共有しましょう。

デベロッパーであるトムは、ある物件を見つけて、お金の算段を考えます。「必要となるお金は15億だ。2000万だけ自分で出そう。あと4.8億の投資を集めて合計5億の投資だ。残りの10億は銀行に借りよう」
といった具合です。すると彼はさっそく、投資を集めるべく動きます。

トム「トゥルルル……、もしもしジョン、おれだよ。ヤバいの見つけたんだよ。Red Brickの倉庫で5階建てなんだけど、1階でおれのダチがアジア系のレストランやって、上はホテルにする。立地がおもしろいからデザインもブッ飛ばすつもりなんだ。オペレーションはジミーのとこにやってもらうつもりだ」

ジョン「おもしろそうだな。規模はどんなもん? 15億? いいじゃないか。1、2億ならおれが乗るぜ、必要な残り分はサムのファンドから入れたらどうだ?」

トム「オーケー、決まりだ。おれの見立てでは、2年後にREITに20億で売って5億の利益が出る……。借入金利を払った後でな。つまり5億の投資分は10億になるってわけだ」

ジョン「悪くない。お前のことだからその先も考えてるんだろ? 同じストリートの別の土地もすでにおさえつつあるんじゃないのか? 全部乗らせてくれよな!」

トム「そのつもりだよ。おれはあのストリートを変えていきたいんだ。さて今回、動くのは俺が全部やる。ジョンが入ってると銀行は安心していい条件を出してくるだろうから、あとは見てるだけでいい。」

ジョン「お前のセンスと勘は信じてるぜ、トム」

トム「さて、プロデュースフィーはいつものように成果報酬だ。おれは2000万だけ出資して皆と同じ船に乗るが、生じた利益の20%を受け取る。もちろん、大ゴケしたらおれも損するし、ジョンやサムもゼロだ。」

ジョン「異議なしだ。利益の80%は、おれとサムのファンドで分ける形だな。銀行の条件が出たところでSPCの設立と出資契約って感じだな。OK、じゃあ来週現地で会おう」

 

こんな感じが、ニューヨークの「デベロッパー」たちの会話だったりします。ここでトムは、自分は出せる範囲でお金を少し出すだけですが、うまくいけば大きな利益を得ることになります。こういう人は例えば最初は小さなタウンハウスを買ってリノベして売ったり、ミニプロジェクトから徐々に大きな仕掛けをするようになったりします。実績を少しずつ積み重ねたトムは、すでに投資家のネットワークもあり、信用されていることがわかります。

こんな話をすると「日本でもそういうの、できるの?」って思いますよね? 細かく言えば、できる部分とやりにくい部分があったりしますが、みんデベしたいぜ! と本気で思ってる人は、きっと近い将来、トムになっていると思いますよ。

そして「都市の15億のホテルじゃなくて、田舎の古民家はどうなんだろ?」とか「うちの地域の旧市街を考えるとなんかイメージわかないなぁ」とか、思いますよね。確かに上の例とはニュアンスはだいぶ違いますが、「本質」は同じともいえます。上の例でも、トムが街の熱いリーダー、ジョンが地域の若旦那、サムが地銀の担当、運営のジミーは地元でゲストハウスやってる人、というふうにちょっと見方を変えれば、その全体が、みんデベです。

ともかく「みんデベ」が「小さなまちづくり」から飛躍するには、このあたりのファイナンス感覚がキモだと思っています。あ、でも次回はもうちょっとわかりやすいやつ、やります。