「デベ=会社」ではない、という話

日本でデベロッパーといえば三井不動産とか森ビルみたいなのが代表的ですよね。でも、小さな土地を買って3つに分けて建売住宅をつくって売ってる不動産会社もデベロッパーだし、イオンももちろんそうです。個人の地主が大東建託のアパート建てたり、建築家に頼んで賃貸建てたりしますが、この場合の地主もデベロッパーといえます。

通常、デベロッパー(デベ)はリスクをとる開発主体のことをいい、その手伝いをする設計者とかコンサルとかのことはあんまりデベとはいわれません。別にいっちゃいけないわけじゃないんですけどね。また個人の地主なんかも普通はデベロッパーさんといわれることはありません。つまり日本では一般的に、「デベ=不動産開発会社」となっています。

偉大なるデベロッパー

ちなみに日本の重要なデベロッパーの一人に、故・堤清二さんがいます。彼はシブヤやリゾートで不動産を開発しつつ、映画館の「シネセゾン」、アート書店の「ART VIVANT」、レコードの「WAVE」、そして「LOFT」「無印良品」……、といった具合に、街の文化、コンテンツ、生活文化事業を創ったことで知られています(しかも小説家・詩人でもあった)。

彼は西洋環境開発とか西武百貨店とかパルコといった不動産開発会社=デベロッパーを経営してもいましたが、筆者は、堤清二という「人」こそ、偉大なるデベロッパーだったと思っています。

アメリカのデベロッパー事情

実はアメリカでは、デベロッパーは「会社」のことを指すイメージではありません。むしろ「I am a developer.(僕、ディベロッパーです)」なんです。そして個人としてのDeveloperは、どこかの会社に勤めているというよりも、一匹狼なプロデューサーのようなイメージだったりします。

せいぜい数人の会社で、「Tom & associates, LLP」みたいな感じで、大きな株式会社のイメージではないんですよね。ここでTomはプロジェクトを企てて完遂する「プロデューサー」です。「この土地でこんなことやろう」「この建物買って、こうしよう」というチャンスと見つけて、作戦=企画を立てる人であり、お金を「集める」人なんです。
(こっちの記事を読んでみて! 「みんデベのファイナンス 〜アメリカの場合」)

ちなみに、米国ではデベロッパーは日本のようにがんがん上場を目指したりはしません。景気に左右される商売なので、向いてないよね、ってなってるんですね。

デベロップする生態系

さて、みんデベは、企業なのか個人なのか。その問いにはちょっと面倒な答え方になるんですが「企業かもしれないし、個人でもあるが、むしろそれらの織りなす生態系である」と思っています。言い出しっぺのキャラ、戦略シナリオライターのキャラ、地域の金融機関、地域の若旦那、地場企業、街でおもしろい小商いや非営利活動をやってる人たち、クリエーター、外から関わる人たち、そして行政など……。いろんな主体がプロジェクトごとにさまざまな組み方をして進んでいくのが、みんデベのイメージだったりします。

そういう一連の仕掛けの連鎖が、それらを構成する生態系が「みんデベ」だと考えています。デベロッパーという言葉の意味やイメージ自体が、10年後にはだいぶ変わってるかもしれない……。そんなふうにも思っています。